R.F.ラコート 1828年
「ギターって何年くらい持つものなんですか?」・・・こんなことを良く聞かれることがありますが、これら19世紀の楽器を持つようになってからは「まあ、まともなものなら200年は軽いでしょう!なんて答えたりしています。良い楽器はそもそも丈夫(これは必須条件!)なうえ、ユーザーもそういう楽器は調整しながら大事に使うし、多少アクシデントがあっても見切ることなく修理します。また手放したとしても必ず需要がありますから結果として長持ちなんでしょうね。学校の備品になってるギターなんてあっという間にボロになっちゃいますから、かける愛情が寿命を延ばすということもあるでしょう。ただ、写真を見てもわかるように時代によってスタイルが変わってしまったり、スタイルは合致していても制作家がこの世を去り希少価値から値段が高騰するようなことがあればオイソレとは手に入らなくなりますから、だんだん見なくなる→新しい楽器をよく見るということはあるでしょう。これはいわゆる「寿命」とは違うものです。
で、左は現代の楽器(J.L.ロマニロス1990)、右が1828年のルネ・フランソワ・ラコート。19世紀、ギター黄金時代を代表するギターです。クラシックギターを習う人が必ず練習曲として弾くようなソル・ジュリアーニ・カルッリ・カルカッシ・コスト・メルツ・・・なんていう作曲家達の時代はこんなギターで演奏や曲作りをしていたんですよ。また、ソロの他アンサンブルも活発に行われていた時代です。レパートリーもオリジナル、アレンジ問わずたくさんあります。この楽器で当時の曲を演奏するのはとても楽しいものです。どの曲もなにか“軽やかな自由”を得たかのように歌いだす・・・。新たな発見がありますね。楽器に教わることというのも案外多いものです。
この楽器はもともとあまり酷使された感じが無いのですが、クリーニングもされているので「時代がついた」感じは若干薄れますが正真正銘当時のもの。フランス製です。弦長も短いしボディーも小型でほっそり。別に女性用とか子供用とかではなくて、当時ギターというとだいたいこんなもんだったんです。小さいといえばドイツのギターなんてもっと小さかったりして「あの指長ゲルマン民族がこんな小さいの弾いていたのか!」ってくらい。きっと指届き過ぎだったでしょうねえ。横裏板はバーズアイ模様のサテンウッド(らしい)のツキ板構造です。ツキ板というのは2枚張りあわせた板という意味で内部から覗くとスプルースです。マシンヘッド(糸巻)も当時のものですが、今でも全くスムーズに動くことには感心します。
音はと言うと、これが小柄なボディに似合わず良く鳴ります。ただ、現代の楽器のようなボリューム感っていうのかな、ブンブンうなる感じではなくて真っすぐな音で良く歌う感じ。発音も鋭敏で明るく、音色も気品に満ちて美しい。スタイルこそ違うけれど、現代の楽器に比べて劣っているとかそういうことは全く無いですね。どちらも良いモノはイイ!
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