レイド・ガルブレイス 1993年
パッとみると「あ、ルビオだ!」、音を聴いても「ルビオ・・・でしょ?」、でもラベルを見ると「あ、違う!・・・Reid Galbrais・・・レイド(リード)・ガルブレイス??」。。。
デイビッド・ホセ・ルビオはブリームも使った往年の英国銘器。男性的で力強い音が特徴で材料もクラフトマンシップも超一流のギターですね。ギター以外にもチェンバロやガンバ、リュートなどの古楽器やヴァイオリンなども作っていました。私も以前71年の自作品を使っていたことがあります。イイ楽器でした。ルビオ工房から独立したポール・フィッシャーやエドワード・B・ジョーンズ、ドイツで製作しているカズオ・サトー氏らは現在一流の製作科として有名です。
で、ガルブレイス。形と言い、作り方と言いルビオに酷似しています。音の持つ雰囲気もそっくり。この人もルビオ工房に居たということですから、いわゆる「ルビオの作り方」で作られた一台なのでしょう。ガルブレイスという名は何回か耳にしたことはあるのですが楽器を見たのはこれ以外に1台だけ。それもルビオにそっくりでしたね。これだけのクオリティーを持った楽器を作る人の作品がこんなに少ないのも珍しい。ある種“幻のギター”でしょう。楽器店に訊ねてみると「ルビオの息子らしい」ということだけど楽器はほとんど見かけないというし、ルビオの息子なら息子で「ルビオ2世」として世に出せば需要も大きいと思うんですけどね、いったいどんな人なのでしょう?名前で海外を含めて検索してもまず出てこないんですよ。ルビオの伝記のようなサイトに行っても名前が出てこない。代わりに「ポール」・ガルブレイスという、ルビオと協力して8弦ギターを弾いたギタリストが出てきたりして、この人関係あるのかなあとか。いずれにしても今は作ってないんでしょうかねえ。いろいろリサーチしてみると、どうやらリュートなども作っていたようでその辺もルビオ譲りか。やはり非常にクオリティーの高い、しかも「ルビオ似」の楽器であったとか。またそういうことならと“困ったときの頼みの綱”ロンドン在住のリューティスト=竹内太郎さんに訊いてみると「1975年だかのルビオのインタビュー記事を見つけて読んだのですが、そこに「レイド・ガルブレイスは、自分の養子で、あらゆる種類のリュートを作り、ポール・フィッシャーはもっぱらアーリーギターを製作している(分業している)」とありました」という返事が。なるほど、ルビオの息子っていうのはここから出ているのかな。じゃ、やっぱり存在はしていたんだ(笑)!・・・というのも、ルビオ工房はヨセフ・スタイマン(スタインマン)というラベルで主にポールフィッシャーが作ったという楽器なども輩出しているので、ひょっとしたらそういうこともあるかも!?なんて思ったりもしていたのですが。。。まあ、とにかく数が少ない楽器って言うのは謎が多いですよねえ。
・・・というわけで、写真の楽器。ギターサークルカノンのニンニンさんの愛器です。ラベルを見るとワークショップなどルビオの名前は無く、エセックスという地名が書かれています。独立後の作品ということでしょう。材質は松・ハカランダでハカランダには美しい緑の線がうっすらと入ってます。ネックの形状も特徴あるヘッドの角度やモザイクのデザインからヒールの形までルビオそのもの。トドメはヘッドデザインで、あの「クリ坊主」!。ギターとしては変わったデザインですけどね、後期のルビオはこれでした。ギタルラの社長に以前聞いた話で「あのクリ坊主はちょっと・・・(笑)、違ったデザインにしてくれってルビオに頼んだことがあるんですよ。でもね“こんなデザインは自分だけだろう?だからこれで行くんだ”って言われちゃってね、頑固って言うかなんというか・・・ハハハ」というのがありました。以前これ以外に見た1台のヘッドデザインは確かそれ以前のルビオのヘッド・・・ギザギザが入っている山型だったと思います。それを見たのが80年代後半で楽器はそこそこ中古だったので80年代?ひょっとしたら70年代終わりの作品だったかもしれません。
ニンニンさんのこのギターは先日久しぶりに触らせてもらったのですがやっぱりとても良かった。ブン!と厚みのある低音とハイポジションまで太さを失わない高音、中音域のしなやかに伸びる感じもなかなか気持ちがイイ。アメリカやオーストラリアの新型ギターのものとは質が違いますが、音量も豊かでアンサンブルの中からも良く音が飛んできます。93年といえば、本家のルビオも比較的柔らかな後期の作りになっているころでしょうか。この楽器も野太い感じを持ちつつ“甘美さ”のようなものも持っていますね。まだまだ10年ちょっとの楽器で健康状態も良好ですからこの先もかなり楽しみな気がします。
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コメント
通りすがりの日曜ギタリストです。ルビオ系の楽器、良いですね。
ガルブレイスという名の製作家の話は始めてお聴きしました。貴重な情報を掲載して下さいまして、とても参考になりました。ありがとうございます。私の周囲にもルビオ作とルビオラベル(ジョーンズ作)があります。どちらも、とてもいい音です。
投稿: kohji | 2006年5月31日 (水) 23時54分
kohjiさん、こんばんは!
ルビオ系は私も好きなタイプで、以前ポールフィッシャーや自作品のルビオを使っていたことがあります。特にルビオはホントにイイ音で思い入れもあったのですが、なにぶん弦長が長かったので指拡張が辛くて結局手放してしまいました。。。ジョーンズのルビオラベルというのもマニアックでイイですね!ルビオラベル(工房品)はどのサインがあっても非常にクオリティが高く、いわゆるルビオの音がちゃんとする楽器だと思います。少し前に近年のジョーンズを見る機会があったのですが、良さはわかるもののあの頃の面影はあまり感じませんでしたね。二つのルビオ、是非大切に可愛がってあげて下さい。
投稿: はせがわ | 2006年6月 1日 (木) 03時08分
はせがわ様。ルビオ本人作は69年で、友人の愛器です。私のはジョーンズ作ルビオ工房、1977年です。この74年工房品は、660ミリですが、664ミリのラミレスと比べると縦の拡張は楽です(当然か)。問題は3点。ネックがやたら太い。弦幅がびっくりするほど広い。弦高高ーい。これ弾いた後だとラミレスでさえ弾き易ーいと思ってしまうほどです。で、目白に持って行ってちょっと調整していただこうかなと思っています。音は、間違いなくあのルビオの音。絶品です。
投稿: kohji | 2006年6月18日 (日) 05時19分