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2006年4月13日 (木)

黒田義正 2005年 小型トーレスモデル

0604132黒田義正さんは兵庫県でギター作りをされている方で、有名なギタリストも使用しているラコートモデルや意欲的な美しい装飾に満ちたファブリカトーレモデルなど19世紀ギターのレプリカでも知名度の高い製作家ですね。レプリカからモダン・・・いわゆるオリジナルモデルまでいろいろ見ていますが、どれも木のぬくもりを感じるフレンドリーなギターという印象を持っています。

この楽器はそんな黒田ギターの中で比較的最近のモデルです。弦長630ミリのショートスケールで、何よりこの細身なボディシルエットが目を引くでしょう?19世紀ギターを見慣れた人ならちょうど“パノルモ”くらいの大きさと言えば「あぁ、、」と思うかしら。子供用ギターじゃないですよ(笑)。実はトーレスの小型タイプを参考に作られたもので、れっきとした由緒あるシルエットなのです。

実はこの楽器の成り立ちには私も一枚咬んでいて、非常に親しみを覚えています。そのエピソードとは・・・かれこれ4〜5年くらい前だったでしょうかね、リク・ミドルトンというイギリスの製作家の小形トーレスタイプを使っていたことがありました。弦長はさらに短くて620ミリでしたね。最初は小さいし、レッスンへの持ち運びにいいね!くらいに思っていたのですが、使ってみると自分の指が短かったせいもあって指拡張とかによるあらゆるストレスから解放されてホントに自由な感じがするんですよ。「ああ、手の大きな人はこんな気分でギターが弾けるのかな」・・・って(笑)ものすごく弾きやすい。しかも軽やかな甘い音色で意外と鳴るし。19世紀ギターでこの解放感を感じたことはあっても、それをモダンギターでなんてあまり考えたこともなかったので当時はちょっと目から鱗でしたね。で、そのミドルトンギターはしばらく正妻の座にいてリサイタルなどもやりました。

で、そんな話を折に触れてこの楽器を紹介してくれた神田メディアカームの酒井さんに話していたのですよ。・・・「全く無理することなくギターが弾ける、そういうことってある意味非常に音楽的だしこういう楽器はイイですよ!特に日本人は手も身体も小さいんだし、もっとこういう楽器が巷にたくさんあったらギター界は変わると思うんですけどねえ。。。」等々・・・その後1〜2年経ちましたか、ある日メディアカームに行ってみると「あっ!これはっっ!!」。黒田さんが作ったの?ローズウッドの横裏板を持ったかわいらしい楽器があったのです。「どーしたんですか、これ?」と酒井さんに訊ねると「ホラホラ、前に長谷川さんとそういう話したじゃないですか。その時に結構面白そうだなあと思ったんですが、そういうモデルを作ってもらうなら黒田さんだとピンときましてネ、一つ頼んでみたんですよ」とまあ、そういうわけです。やはりこういう楽器は元のモデルやそれを作った先人に愛と尊敬がないと良い作品にはならないでしょうから、確かに黒田さんならうってつけでしょう。

写真の楽器はその後しばらく間を置いてから出来た作品。表板松、裏板はエレガントなカーリー(とら杢)メープルでやはり驚くほどしっかり鳴ります。「小さいボディ=音も小さい」は間違いですよ!ボディの違いは鳴りというより音の広がり方に強く感じますね。一般的なボディがズドーンと突き進むような出方をするところ、小型ボディは“ぱぁん!”と空間に広がる感じがあります。タッチに対する反応も敏感で愛らしい明るい音色です。同じボディのローズに比べるとメープルは軽やかで丸い感じがあり、さらに明るさを増した印象がありました。ソロはもちろんのこと、他楽器とのアンサンブルにも良いでしょうね。

ショートスケールや小型ボディのギターってイイモノですよ。だって考えてみて下さい、あの指の長い欧米人と同じ(サイズの)楽器を使うって人によってはかなり大変なことだし、それがテクニックを制限してギターを難しくしていることって少なくないと思うんですよね。テクニックに余裕があれば、もっともっと音楽的なほうに練習や気持ちを振り向けることだって出来るかもしれませんよねえ。それでなくても初心者や大人になってからはじめた方にとっては指の拡張ってそれだけで大変だったりするし。あと、ギターを抱く感覚も案外重要で、小型のボディーは身体の小さな人でも格闘するような感覚が皆無で、文字通り“手の内に入る”っていうんですかね、友達感覚。「これなら弾ける」って気にさせてくれます。

黒田さんには一度お会いしたこともあり、メールで少し楽器についての情報交換などもしたことがあります。昨年はこの楽器についても少し感想をメールで書きました。戴いたお返事には「・・・まさに長谷川さんのおっしゃるとうり日本のギター界がもっともっと小さいギターの良さを認識して欲しいところです・・・(手の小さい人まで)何も弾きづらい大きなギターで無理な音楽することも無いと思うんですけどねぇ」と意気投合。さらに「・・・この小さいタイプは材料の変化が音にダイレクトに出るので今後色々と材質を替えて作ってみたいと思っています」とありましたから、これからもちょっと楽しみにしています。今は何だったっけかな、木の名前は忘れてしまいましたが珍しい木で横裏を構成した楽器があるようですよ。見た目の違うギターって何だか“変なギター?”“変わり種?”みたいに思われやすく、ついつい選択肢から外されがちですが機会があったら今一度、偏見を捨てて素直なココロで(笑)是非弾いてみて下さいね。案外幸せはそこにあるかも。。。

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