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2006年5月15日 (月)

ゲリー・サウスウェル 作 1997年 シュタウファー レニャーニモデル

0605181ヨハン・ゲオルグ・シュタウファーJohann George Stauffer (1778-1853)はジャーマンスタイル19世紀ギターの代表的な存在ですね。今ではフォークギターの代名詞でもあるC.F.マーチン(の初代)を育てた人でもあります。そうそう、シューベルト作曲「アルペジョーネソナタ」で知られるアルペジョーネと言う楽器・・・これは6本弦でフレット付きでチェロのように弓を使って弾くものなんですが・・・それを開発したのもこのシュタウファーさんですね。シューベルトもシュタウファーギターを使っていたとか。。。今回紹介するのはシュタウファーの中でも最も特徴があり、象徴的なレニャーニモデルのレプリカです。

レニャーニというのは当時活躍していたギタリストの名前で、このタイプはレニャーニさんといわば共同開発されたモデルということです。まずざっと楽器を眺めて目に付くのがこのヘッド。「スクロール型」と言われる流れるようなラインがカッコイイでしょ?エレキギターで“フェンダー”でしたっけ?こんな形をしていますよねえ。あのヘッドも実はこんなところに原点があったのですよ。とは言えスクロールヘッドはシュタウファーのオリジナルというわけでもなくて、シュタウファー自身イタリアのスタイルから影響を受けていますからさらにもっと歴史があったりするようですが。。。そして、そのヘッドには華麗な装飾の入ったフルカバードの6連のマシンヘッドが取り付けられています。さらに目を移すとネックがネジで止められて表面板にかかる指板は接着されおらず、中空に浮いています。「フライングフィンガーボード」と言われる構造でネジを付属のキー(ウオッチキーのようなもの)で締めたり緩めたりすることでネックの取り付け角度を微調整し弦高調整をサドルに頼らず手軽にできるようになっています。これは実用上ものすごく便利!ボディシェイプはラコートなどに比べるとくびれがやや強く裏板は若干ラウンドが大きいですね。表板は松、横裏はメープル。弦長は630ミリですがジャーマンに関しては610ミリなんていうものもよく見かけられるようなので普通に大きいほう?くらいでしょうかねえ。あと、延長フレットが22フレットまで付いています。

0605182弾いてみると“優しい音色”という印象があります。ボーーーーンと真っ直ぐよく伸びる低音とポォン、ポォンと丸く柔らかな高音。ラコートほど明るくは感じないのですが、この楽器に関して言えば「どちらかというと明るめ」くらいの感じはしますね。と言うのも以前ジャーマンの(レプリカではなく)オリジナルを持っていたり、知人のものを弾かせてもらったこともありますがオリジナルは全体に(よい意味で)もっと渋めな印象がありました。まあ、こればかりは個体も違うしそれ以上に時間の経過が百何十年も違っちゃいますので比較にもならないのですけどね。。。適度に細く薄いネックはとても弾きやすいし、ネック裏の黒塗りも触った感じが良いですよ。ただフルカバードの6連ペグは結構重いので持ったときのバランスはどうもヘッドに重量を感じてしまいます。もちろん弾きにくいということはありませんけど。このペグはロジャースという世界で最も有名な手作り糸巻メーカーが作った特製のレプリカなのですが、これ自体がちょっと当時のものと比べて重いんじゃないかと思います。精度や感触はさすがに抜群です。通常のクラシックギター用3連ペグと同様、回していて気持ちいいです♪。音量は弾いていると自分にあまり響かないので「どうなのかな?」と思ったりもしますが、前で聴くととてもよく鳴っているのがわかります。しかも直進性が強いというんでしょうかねえ、正面に来るとまるで見えないレンズがそこにあるかのように音が大きく聞こえます。これがどこの構造から来るのかはよくわかりませんがとても面白い特性を持っていると感じますね。

製作は以前紹介したトーレスレプリカに続いてのゲリー・サウスウェル氏。全体に装飾は少なくシンプルな外観ですが、作りにきちっとした精度と柔らかさを感じられる点が素晴らしいですよ。それに彼の手によるいくつかのレプリカを弾いたり聴いたりしてみると音にそのモデルの特徴がちゃんと反映されているというのもサウスウェルギターの良いところですね。研究者としての見識と製作者としての技術・製作姿勢が非常に高いレベルで備わっていることを思わせる楽器です。このシュタウファーレニャーニモデルはHPのカタログにも掲載されていて英文で製作者による解説等が見られますhttp://www.southwellguitars.co.uk/index.shtml

現在この楽器にはハナバッハのスーパーローテンション(黄)の弦を張っています。いわゆる歴史的なアプローチにはオリジナルのラコートを使うほうが多いので、どちらかというともう少し自由に考えて合うシチュエーションであればどんどん使うような方向で使用していますね。そんなわけで弦も今は敢えて普通のナイロン弦にしているというあたりです。テンションはこれでちょうどいいくらいでしょう。音の粘りが少なくスッキリした鳴りなのでレパートリー的にはどうもスパニッシュやそういった系統の音楽は弾いていて気分が出にくいのですが、古典ものはもちろんのことそれ以前のものやあとは・・・むしろ現代ものとか?ポップス的なもの、日本の音楽などにも合わせてみると意外とピッタリ来るものが少なくありません。それと演奏しているときの見た目がエレガント!というのもプラスαのポイントでしょうかねえ。19世紀ギターは装飾的なものも多いので見ていても楽しいものですが、この楽器はフォルム自体がイイですよ。メープルの木目も美しいし!まあ、弾いてる本人がエレガントかどうかはこの際語らないとして(笑)。。。

≪2010.11.16追記≫
先日ネットで調べ物をしていて興味深い記述を発見しました。
それは。。。有名な製作家の星野良充氏HPより
「鎌田慶昭さんが(現在はギタリスト益田正洋さんが)使っている
 シュタウフェルモデルの 19世紀ギターは
 イギリスの製作家 GarySauthwell,1997 をモデルにした私の試作品です」

レプリカをコピーするっていうこともあるのですねえ。
ま、それはともかくとして
…これ、たぶんこのギターのことを言っているのだと思います。

ここで紹介したサウスウェルギターは
何年か前にわたしのもとを離れていきました。
今は別な方にかわいがられていることでしょう。
それはそれでよかったと思っていますが
こんな話を見つけると

ああ、いいギターだったなあとか
もうちょっと置いておいてもよかったかなとか、
また見てみたいなとか
なんとなく思い出します。

元気でやってるかなあ。。。

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コメント

アルペジョーネというチェロとギターの複合楽器を復元してYouTubeに自作自演で放映しました。
アルペジョーネで「鳥の歌」(カザルス)を演奏しています

http://www.youtube.com/watch?v=gkrDTQyjAN4 

投稿: okusan | 2009年8月24日 (月) 14時56分

こんにちは
投稿ありがとうございました。

ずいぶんほったらかしにしていたブログでしたのでお返事もしていなくて失礼いたしました。

そちらのサイトでプロフィールを拝見しました。東久留米の方なのですね。結構近いです。

アルペジョーネは昔から興味を持っていました。いつかお会いして、楽器談議でもしたいですね!

投稿: わたし | 2009年11月13日 (金) 13時19分

大変ご無沙汰しております。あれからアルペジョーネもつづけています。昨年の演奏会VTRがあります、ご覧ください。
東京ブリュッセル トリオ、公演video。レクチャー、アルペジョーネ制作の解説してます。
http://www.tokyo-bruxelles-trio.com/Concert.html  

友人のアルペジョーネ奏者 ニコラ氏の演奏でわたしの楽器を弾いてもらっています。
"Monologue" for solo arpeggione by Kris Oelbrandt
http://m.youtube.com/watch?client=mv-google&gl=JP&hl=ja&v=wYAq--ltqzs

投稿: okusan | 2013年3月30日 (土) 01時09分

こんにちは
またも出遅れました~(^^ゞ

投稿ありがとうございます。

いいですねー、アルペジョーネ。
そのうち生演奏を拝聴する日が来るでしょうか。

これからも頑張ってください。
ご活躍お祈りしております!

投稿: わたし | 2013年4月 7日 (日) 15時51分

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