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2006年10月 9日 (月)

終了:ギター&ピアノコンサート(武蔵境)

“ギターとギターのあるコンサートシリーズvol.19”
ギター&ピアノ

2006年10月9日(月・祝) 14:00開演
武蔵野スイングホール(JR中央線・武蔵境駅すぐ)
出演:所 千晴(ピアノ) 長谷川郁夫
061009gp プログラム
2つのロンド/ジュリアーニ
幻想曲op.30/ソル(ギターソロ)
序奏とファンダンゴ/ボッケリーニ
アルゼンチン舞曲集/ヒナステラ(ピアノソロ)
ある貴紳のための幻想曲/ロドリーゴ
4つの小品/シュヴェルトベルガー 
ギターとギターのあるコンサートシリーズの第19回。無事に終了しました。いらして戴いた皆さま、また応援して下さった皆さまに感謝申し上げます。

今回はピアノとのアンサンブル作品を取り上げました。前半はギターの黄金期といわれる19世紀前半のレパートリー。黄金期ですからたくさんの作曲家(演奏家)が居た時代ですが、中でもこの頃の代表的なギター作品の作曲家といえばジュリアーニとソルでしょう。使用ギターもサウスウェル作のシュタウファーレニャーニモデル(19世紀ギターのレプリカ)を用いてまず始めにジュリアーニの2つのロンドからスタートしました。

ウイーンでギターの名手として活躍したジュリアーニは、ベートーベンやフンメル、シューベルトと親交があったり、のちに母国イタリアでもロッシーニやパガニーニとも親しくしていたりと中々外向的な人物だったようです。作風もそれを表すようにギターの機能を活かした華やかなものが多く見られ、アンサンブル作品もたくさんあります。当日演奏の2つのロンドはギターとピアノ用の作品で明るい第1番、重厚な第2番どちらも小品ながらベートーヴェンを思わせるようなウイーン古典派の響きをたっぷり楽しめる作品。実は今回まるっきり初めて演奏する曲だったのですが、それだけにこの曲と出会えた(演奏できた)のはとても嬉しかったですね。ギター界では“どちらかといえばソルのほうが音楽的にレベルが高い”などと言われがちですが、ジュリアーニのこうした均整のとれた美しさと大きな楽想を伴って充実した和音の響き、ウイーン風の歌い回しやイタリア人特有の?サービス精神は当時のギター作品の中でも彼ならではのもの。ソルに劣らずレベルが高く、どちらがというものでもないでしょう。私はといえばギターの効果的な扱いに長けていて理屈抜きに弾いていて楽しいと感じさせるジュリアーニの方が好きなくらいです。

Has一方ジュリアーニとは対照的にギターDuoと歌の伴奏以外アンサンブル作品が見つからない(オーケストラ演奏のバレエ作品等は書いているのに!)ソルはソロで演奏しました。2つの愛唱歌曲(La mare MichelとLa petite Jeanneton)の主題による・・・という副題が付いたこの幻想曲は序奏・変奏・終曲から出来た比較的規模の大きな作品です。一連の構成や主題のもつ雰囲気などちょっとシューベルト的なロマンチシズムが感じられて好きです。渋いですよねえ。この渋さがソルの魅力だなあといつも思います。

第1部の最後はボッケリーニ。この作品は有名なブリーム編を使いました。元々はギター5重奏曲(弦楽カルテット+ギター)で、ボッケリーニ自身このタイプの作品は12曲も作っているそうです。中でもファンダンゴの入った4番はとても有名。ただ、このギター5重奏曲集のギター(パート)って、どれもそんなに主役じゃないんですよ。。。そこでブリームは考えた。。。ギターがもっと活きる形で鍵盤楽器(楽譜はチェンバロ用)とのアンサンブルに再編成してしまおう!・・・まず、曲の全てを解体してギターパートがオイシイ所を取る(笑)。そして残りを鍵盤へ・・・すると丁々発止とした2つの楽器のやり取りがスリリングで楽しい素敵なアレンジが完成。いやあ、さすがブリームです。尊敬します。今回はチェンバロではなくピアノでしたが、アレンジの効果・楽しさはいささかも減らないという感じがしました。

休憩を挟んでからはミニトークタイム。いままでこのコンサートシリーズ(・・・というか、私のコンサートのほとんど)はおしゃべりコンサートのスタイルだったのですが、今回は演奏の時はいわゆるクラシックコンサート型のおしゃべり無しで進め、ここで楽器を持たずに出てきて2人でトークをするという形を試してみました。アンサンブルの話し、楽器の話、ピアノやギターを始めたころの話など短い時間でしたがちょっとホッとする時間?いかがだったでしょうか。

Toko後半の演奏はピアノソロから。ヒナステラのアルゼンチン舞曲集は民族的なリズムや旋律とエネルギッシュな不協和音に満ちたエキゾチックな作品。小柄な所さんからビックリするような迫力が出ていたとお客さんも言っていました。所さん曰く「ギターとの共演だからこんな感じかなあと思って選んだ作品だったんですけど、プログラムを見渡すと浮いちゃってました?」とか(笑)。まあ今回結構クラシカルな響きの作品が多かったですからねえ。。。でも変化があって良かったと思いますよ!

そしてギター登場。“ある貴紳〜”は今年3月に成田で成田フィルと共演したので私にとっては今年2度目の演奏でした。オケとピアノでは響きも勝手も違うものですが、やはり名曲ですね。なんて優美で清らかな曲なんでしょう!!弾いていてとても幸せな気分になります。また機会があったらやりたいものです。オケは音色の多彩さもダイナミクスの豊富さもあり、これは楽器(編成)が違う以上比べるようなものでもないのですが、相手がピアノの場合、当然バックの演奏者が一人なのでアンサンブルはより親密になりますね。いつかオーケストラとの感想で書いた「クジラと一緒に泳いでいるような感じ」とは逆によりタイトな重奏“感”がありました。こういうアプローチもなかなか楽しかったですよ。

最後はシュヴェルトベルガーの4つの小品。ラテン風のメロディやリズムを持った小品集ですが、これがなかなかイイ曲。あまりメジャーな作品ではないし、タイトルもそっけないので選ばれにくいとも思うのですが当日のプログラムの中で「よかった」と言われることが多かったのもこの曲でした。ギターとピアノのバランスもちょうどよくアンコールにも最適ですから、この編成で何か探している方にもオススメしておきます。アンコールにはカルッリのギターとピアノのための作品からかわいらしいロンドを演奏しました。

聴いていただいた方からの感想では「ギターとピアノがこんな風にアンサンブルできるなんて!」と意外な組み合わせの妙を楽しんでいただけたようですが、一方でやはり「ギターとピアノとのバランス(ピアノが大きい)」を上げる声も多く聞かれました。ただそうおっしゃっていただいたほぼ全ての方が「コンサートが進むにつれ気にならなくなってきた」との事でしたから、(聴衆の)耳の慣れなのか奏者のプレイの問題なのかそれとも楽器の選択(特にギターは前半19世紀レプリカ、後半モダンだったので)なのか、はたまたPAを使うべきだったのか等、もう少し時間をかけて検証し考察を深めていきたいと思っています。確かに音量差のある、そしてある意味似た機能を持った楽器がアンサンブルするのは案外難しい部分もあって、例えばこちらの希望をどういう形で伝えれば思った方向になるか等、いろいろと試行錯誤するシーンもありました。私としても今後もう少し経験を積みたいなとも思っています。

また使用ギターに関してサウスウェルの19世紀レプリカとモダンはロマニロスを使いましたがそのコントラストは結構楽しんでいただけたようです。特にレプリカの方は音圧をそれほど感じないのにドーンと通ってくるその響き方に改めて感心するという意見がありました。オリジナルもモチロンそうですが、この辺りが19世紀ギターの特徴的ななり方のような気がします。楽器自体が小柄ですから余計にそう感じやすいというのもあるでしょう。

Preそうそう、最後になりましたがこの日はプレコンサートという企画もやってみました。演奏は弟子の田村功君と平原雅史君。開演前のひと時20分くらいを2人の生演奏でお迎えするというもの。曲は平原君のソロがヴィラ=ロボスのプレリュード第1番、続いて田村君でパットメセニーのジェームズ、Duoでヨークの三千院、最後に田村君の自作自演で「徐々に晴れてゆく霧とともに」の4曲。「まあ、生BGMくらいのつもりでいいでしょう」と声をかけたのですが、実際は熱心なギターファン(とくに田村君はうちの教室ではファンもいたりして)が前列に陣取って凝視(笑)!「キンチョウしたなぁ〜」と言っていましたね。ま、何事も経験。コンサート中も色々手伝ってくれてありがとう!そして写真はこれもいつもの石原翔平君の撮影。いつもありがとう。

ギターとギターのあるコンサートシリーズはまた今後も続けていきます。ぜひ今後とも応援下さいますよう、よろしくお願い申し上げます。

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コメント

面白かったです! ギターが消えそう!と思わせておいて(?)ピアノの音が消える時にす〜っと現れるあたりにスリルを感じてしまいました。
今回チラシの事を少しお手伝いさせて頂いて、作業しながら音量の違いがどうなるのか、大変気になってたのです。期待と願いを込めて一つの楽器のように聞こえればいいのかなあ…とか思って、『GuPitarno』なるモノもコピー案で考えました。発音がきれいにならなそうなのでやめておきましたが…。
ところで、チラシのイラストとか全部自分で描いてないで、たまには相談してください!長谷川さんのレイアウトは完璧なので私の仕事が上がったりです! 

投稿: のり | 2006年10月15日 (日) 23時55分

のりさん、こんばんは(^_^)
いやぁ、チラシの件では大変お世話になりました。夜中に押しかけたりしてご迷惑もおかけしました。おかげさまでチラシの評判も良かったんですよ!感謝感謝で練馬方面に足を向けずに寝ています。また、当日も聴きにいらして下さりありがとうございました。ご同行の桑原さんにも久しぶりに会えて嬉しかったです。今度はホントに桑原さんも交えて野外活動系の作戦会議も致しましょう(^_^)。河原のディナーをご馳走させて下さい。奥様にもよろしくお伝え下さい。

投稿: はせがわ | 2006年10月16日 (月) 00時52分

た・確かに練馬方面に足を向けると「西枕」になりそうだから、まだ止めてください。

投稿: のり | 2006年10月21日 (土) 12時30分

はじめまして。
ギターとピアノの編成のコンサートってあるんですね!
聴いてみたかったです。
ところで、「ある貴紳のための協奏曲」のギターとピアノのための
楽譜ってどちらで入手されたのですか?
差し支えなければ、教えていただけますと嬉しいです。
それでは。

投稿: U | 2007年4月28日 (土) 16時06分

こんにちは。書き込みありがとうございました。
ある貴紳~の楽譜について、私の楽譜はかなり昔に手に入れたのですが、これは今でも現代ギター社やギタルラ社など、ギターの楽譜を多く扱う専門店ならあるような気がします。

で、ちなみにこのタイプの楽譜は「ピアノスコア」などと言われたりして、大譜表の体裁をしていますが、演奏効果を狙ったいわゆるコンサート用“ピアノ伴奏譜”ではなく、とりあえず(ギターが)練習したり、楽曲を把握するために大体ピアノで弾ける程度に大譜表にまとめたというようなものです。

ですから、時々指が届かず弾けない箇所があったりしますね(^_^;)。演奏効果的にも?な部分があったりしますから、リハの中で適宜納得できる形にしていくのがいいですよ。

投稿: はせがわ | 2007年4月28日 (土) 17時58分

早速のお返事ありがとうございます。
また、楽譜の情報も教えていただきありがとうございます。
実は、職場で同様の方とギターとピアノのアンサンブルしたいね、
ということになって、「ある貴紳の」の楽譜を探すことになったのですよ。

近所の楽譜屋さんをのぞいてもなしのつぶてでしたので大変助かりました。
アドバイスもいただけましたし、あとは楽譜を入手して練習するだけとなりました。

それでは、失礼します。

投稿: U | 2007年4月28日 (土) 23時12分

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