ホセ ラミレス 2世 1935年
先日からちょっと素敵なギターが来ています。
それが上の写真。ラミレスの2世で1935年のもの。
2世のことをおさらいすると。。。
「ホセ・ラミレス2世(1885-1957)は、4人兄弟の長男で、ギターの仕事に興味をもったのは彼一人だった。子供の頃から父1世のもとで弟子のエンリケ・ガルシア(1868- 1922)やフリアン・ゴメス・ラミレス(のちにブーシェに影響を与える)、叔父のマヌエル・ラミレス(セゴビアのコンサートギター製作)達と一緒に住み、恵まれた環境でギター製作を習得。2世はギター奏者としての才もあり、1904年、20歳のとき演奏グループの一員として南 米を演奏してまわり、最後にはプエノス・アイレスで結婚し永住まで決意していた(ラミレス3世は、1922年にブエノス・アイレスで生まれた)。しかし1923年、ラミレ ス1世が亡くなったと知らせが入り、ラミレス2世は、1925年、マドリードに帰国せねばならなくなり、19年もギター製作から遠ざかっていたが、父の工房を引き継ぐことになっ た。店を引き継いで数年後、セビリヤの博覧会で最高賞を得て、彼の名は世界的に知れ渡った。」
なんていうあたりが ネットで検索しても出て来ます。
ラミレス家の歴史は3世が書いた
「ラミレスが語るギターの世界」(荒井貿易出版部)などがお奨め。
くわしく、また物語としても面白く書かれています。
さてさて、わたしもラミレス1世や2世はときどき試奏する機会がありましたが
横裏がシープレスのかなり酷使されたようなものなどがほとんどでした。
いや、それもなかなかいい音がしていましたが、
今回のような「コンサートモデル」というべきファーストクラスのギターは
ちょっと思い浮かばないんで、今回初めて触れたかもしれません。
外観を眺めて
「おお、いい顔してるなあ」
表板の松は飴色。
横裏のハカランダもダークな色合いで美しい。
ヘッドの造形は今のラミレスとちょっと違いますが
モチーフが一緒ですね。王冠の意匠なのかな?山かな?
まあとにかく伝統のラミレスヘッド。
早速ペグを回して調弦を始めると
なんともふくよかな響きが部屋に満ちていきます。
古いスペインギターによくある低音の深い響き。
ボディが一瞬“ブルン”と震えるような感じです。
ただし、ドスドス云いすぎるようなことはなく
絶妙なバランスで品を保っていますね。
思うにこういう音作りってレプリカは別として
第二次大戦前までって気がするんですよね。
その後どんどん価値観が変わっていったのかな、
まるで低音ブルンは否定されていくように姿を見なくなりますが
やはりこれも魅力がありますねえ。タレガなんか弾くと本当にはまります。
高音の方も甘くつややか。
(現代のギターに比べ)若干短めの余韻。
このくらいの時代の(古い)ギターは音の立ち上がりが強いせいか
おしなべてそんな感じがします。
それでもちゃんと音が繋がるというか歌いやすい音です。
しなやかさと腰の強さがちゃんとあり、
強い入力でも音がつぶれないところが名器ですね。
くわえてスペインギター独特の色気ある音色も備えている。
それでいてあまり張力が強く感じないのもいいですね。
弾きやすいです。ちなみに弦長は655ミリ。
内部をのぞくと9本の扇状力木。
これは先程の「ラミレスが語るギターの世界」の写真の中に
ラミレス2世が同じ組み方をした表面版を持っているものがあります。
おおっ、まさにこれだ!と思いました。
また楕円形のスタンプが底のブロックと表面版の裏に押されていました。
ホントいぶし銀のような渋くていい音!
製作家と演奏者と時間が作ったヴィンテージの味わい。
いいギターだなぁ、これ。
35年というとおよそ75歳。
そう言えばわたしの父がそれよりちょっと若いくらいですね。
そう思うと、この歳月もすこし身近に感じます。
楽器としての75歳はいいものならまだまだ現役。
ここから先はモノとしてどのくらい丈夫かもとても大切でしょう。
丈夫じゃない名器はあり得ません。残っていきませんから。
このラミレス2世はごく一般的な修理はされていますが
特に使用上の問題はありませんでした。
さすがラミレス、立派なものです。
この楽器は広島のギターショップ“エルコンドル”さんから送っていただきました。
どうもありがとうございました。
ずいぶん長くお預かりしてしまいましたが、そろそろお返ししないと。
なんかちょっとさびしい気もしますが…買えないし
この辺の年代のよいスペインギターというと
サントスやガルシア、エステソ、シンプリシオなどなどありますが
ラミレスというとどうしてもセゴビアが使った3世や4世のイメージが強く
(現在は5世ということになっています)
その名前は1960年代以降の楽器という印象がありますから
2世(1世も)は忘れがちかもしれませんね。
でもこうして触れてみると
本当に立派な楽器を作っていた素晴らしい工房だったと
あらためて敬意を持ちました。
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