野辺成一作 Homage 2009年
昨日…日付的には一昨日の話です。
生徒さんからよいギターをほしいと相談があったので
ショップを2軒ほど一緒に回って選んできました。
一応手工品のエントリークラスということで
30~40万円くらいのものが今回のターゲット。
久しぶりに8台ほど
ドドっと見ることができて
わたし的にも楽しく、勉強になりました。
ショップが厳選した楽器たちは
エントリークラスとはいえ
けっこう堂々とした鳴りと美しい音質、
個性もちゃんとあって
仕上げもきれいでしたし
どれも立派なものでしたよ。
野辺成一(のべ しげかず)作 Homageというモデル。
製作家の野辺さんは
日本の名工、故・野辺正二氏の息子さん。
長く野辺ギター工房を支えてきた一人です。
今は独立して自分のラベルで楽器製作をしています。
≪野辺成一ギター工房≫
最近ずっとご無沙汰してますが
実はわたしと同年代で、
ギターのことから趣味のことまで
いろいろお話したこともあり、
職人らしいビシッとした面を持ちながら
気さくな人柄で、とても好感を持ちました。
さて、ギターの方ですが
きれいな貝の装飾(口輪)を持った
エレガントな外観をしています。
全面セラック塗装。
表板はアカモミという材。
わたしはあまり詳しくはないのですが
グループとしては松のほうでしょう。
調べてみると
ドイツトウヒとも呼ばれているようです。
クリスマスツリーにもなる木だとか。
その他
裏板のローズウッドやその他の素材もともに
かなりシーズニングされているものらしく
信頼できる良材を惜しみなく使っているということです。
弦長は標準の650ミリ。
ネックや指板等のサイズ関係も
ごくごく標準的で弾きやすいです。
音は
木のぬくもりが伝わるような
あたたかみのある音色で
「素姓の良さ」が感じられました。
優しさはあるのですが
ピンと張るところは張っていて
ゆるいギターではありません。
音の広がりや遠くへ届く感じも自然で
ずっと懐に抱いて
ずっと弾いていたい…
何かそんな気分にさせるギターでした。
外観はおしゃれで現代的な感じもありますが
トラディショナルなサウンドです。
価格は42万円(税込)のモデルでしたが
明らかにエントリークラスを超えた、存在感のある音でした。
そうですねえ、知らずに弾けば50~60万円くらいの
いわゆるミドルレンジのグレードに感じます。
まあ、40万の楽器ですから
30万の楽器と比べたら30万は不利ですけど
モデル名のオマージュとは
○○を讃えるとか
そういう意味なのですが
これは名工であった
お父様=正二氏を讃えるという意味だと
ショップの方が教えてくれました。
わたしのまわり(サークルのメンバーさんとか)にも
野辺正二ギターのオーナーがいて
わたしも野辺正二ギターを持っていたことがあり、
(あ、今でもテルツギターを持っています。)
その音や雰囲気はとても身近に感じていますが
この成一ギターをしばらく弾いていると
お父様のギターの音色に通じる響きを彷彿としました。
野辺正二氏はたしか2004年に亡くなったと記憶しています。
ですがその音の魂のようなものは
次世代のギターの中にも脈々生きていて
新たなスタイル、新たなセンスとまざりあいながら
今日も素敵なギターを生み出しているのだと思うと
継承というか、時代が進んでいく様を
ありのままに見たような思いがして
あらためて大変感心しました。
今回のショップはいつもジェントルな対応がうれしい
神田のメディアカームさんにお世話になりました。
ありがとうございました。
さて、後日談。
今日はその新オーナーさんからメールが届きました。
「…昨日は、1日お付き合いくださいまして、ありがとうございました。
昨日は興奮して遅くまで起きてギターをいじっていました。
音はもちろんですが、弾き心地や外観も、とてもよく満足しています…」
ああ、わかりますねー。いい話だなあ~。
わたしも初めて手工ギターを手にしたときは
かなり興奮しました
うれしくていつまでも弾いて
ねむれなかったのを覚えています。
こういういいギターとは長い付き合いになりますから
大切に、たくさん弾いてあげてください。
| 固定リンク | 0
コメント
思いがけず目にした懐かしい名前。
私はかれこれ30年前、野辺兄弟と同じ釜の飯を食った仲間でした。ギター製作ではなく、某体育会で、ですが。
当時から兄の方は父君の跡を継ぐのだと頑張っていましたが、弟も同じ道に進んだのですね。
投稿: 衡山 | 2011年2月28日 (月) 20時53分