« 2014年10月 | トップページ | 2014年12月 »

2014年11月

2014年11月 5日 (水)

アマリオ・ブルゲット 2014年作 19世紀ギタータイプ

またうちに面白い楽器が来ています。
まずは正面。

Dscf1501

スペインの製作家アマリオ・ブルゲットによる
ロマンティックギター(19世紀ギター)タイプで
今年出来上がったばかりの作品です(2014年)。

実は今度の演奏会はこの楽器を使用し音やまつわる話などを紹介するということで
この楽器を取り扱っているムジカ・アンティカ・湘南(MAS)さんからお預かりしています。
このコンサートについては以下からご覧ください。11月22日です。
MASさんのサイトへ飛びます

さて、ギターの話。スペックから行きますと
フレンチスタイル(ラコート型)に属するもので
弦長が630ミリ、スプルースの表板とメープルの横裏板、
糸巻は木ペグに見えて実はギアが内蔵されているという製品で
最近ときどき見かけますがなかなかスムーズ。

音の方は新作のギターらしい溌剌とした若々しさと
19世紀ギター的な優雅で品の良い響きを持っています。
高音から低音までバランスよく響いているし音量も十分にありますね。


Dscf1502

こちらは裏板。
綺麗なメープルを使っていますが、
実はアマリオの19世紀タイプにはシカモアという材を横裏に使ったスタンダードと
この写真にある美しいメープルを使ったカスタムの2種がありました。
調べてみるとシカモアもメープルの一種のようで
材の種類についてはわたしもあまり明るくはないのですが
スタンダードの方も同様の白木のような素材でしたが
このようなきれいな杢は出ていないプレーンな感じでした。

音については比べるとやはりカスタムの方が音色が良いのですが
スタンダードもよく健闘していて、その差はごくわずかでした。

あえて文字にしてみると
音の輪郭のシャープさにおいて、カスタムの方が上回っていました。
まあ、この辺は興味のある方は是非MASさんまで試奏しに行ってくださいhappy01
スタンダードとカスタムの値段は倍ほど違うようですから、
スタンダードのコストパフォーマンスの高さにもきっと驚くでしょう。

ネック裏は黒の塗りです。
太さや厚さはどちらかというと現代的で
当時のものと比べると少しがっしりしていますが
手へのなじみは良く、弾き心地もとても良いです。
むしろ、モダンギターととっかえひっかえするには
こちらの方が違和感が少ないと思います。

Dscf1503

美しい杢を持った材は当時から上級機種にはよく使われていました。
中でもメープルは代表的な材です。
今は出来たばかりで白さが目立ちますが
経年変化によって色づき、より魅力的な表情になるでしょう。
この楽器の仕上げはビーワックス(蜜蝋)仕上げということで
ニス仕上げとは対照的に光沢が抑えられた表面です。
ただし、磨かれた木そのものの光沢はありますので
それはそれで美しいものです。
このような虎目のメープルは光にかざして見つめていると
立体感が感じられ、吸い込まれるようです。

Dscf1504

ブリッジはラコートによく見られるようなニコニコした形状。
オリジナルの造形と比べると簡略化されているのは少し残念かな。
ただ、レプリカでここが簡略化されているものは多く見ますから
意外と手のかかる(面倒な、あるいは簡略化したくなる)部分なのかもしれません。
ブリッジ材は黒いけど、うーん・・・塗っているようには見えないので
ローズやハカの黒いところ?ちょっとわかりませんでした。
弦を止めるピンは段のついた・・・これは黒檀かな。

あ、そうそう
弦はMASさんが扱っているトロ社のもので
高音弦が牛ガットのニス引きで062, 073, 088だったかな。
低音弦は絹の芯による銀色メッキの銅巻き線で
今度の演奏会では半音下げの415Hzで調弦します。
このくらいだと弾きやすく丁度良いくらいのテンションで弦も長持ちします。


Dscf1505

口輪はシンプルな同心円のもの。
綺麗に作られていますね。
当時のギターはここに意匠を凝らしたものもあり
それはそれは魅力的でありますが
こういったシンプルなものもたくさんありました。

指板が表板上に乗るタイプで
表面板上の6弦側は少しカットされています。

指板が表面版に乗るタイプは当時からありますが
その方が12フレット以上がよく鳴ります。

現代的なアポヤンドをしっかり弾くようなアプローチでは
指板が表板と面一なタイプだと右手が表面版を叩いてしまったりしますから
そういう意味でも使いやすいでしょうね。

ただし、ブリッジ側の弦高が上がると
19世紀的な小指を表面版につけて弾く方法はやりづらくなるでしょう。

Dscf1506

ラベル。モデル:ロマンティカとあります。
昔のギターの裏板は内側がスプルースで外側が杢の綺麗な材
というような作りが良く行われていました。
わたしのラコート(オリジナル)はそうなっています。

この楽器はそうなっていませんが
現代のギターではほとんど行われていません。
レプリカ系でもやらない場合が多いように思います。


Dscf1508

少し大きめの8の字ヘッドに装着されているのは
ギア式の木ペグ(って呼んでいいのかな)。
外見からはまず判別ができませんが、さすがギア。
回してみるとわかります。
木ペグで苦労した人には涙がちょちょぎれるほど使いやすいです。
ちょっとずるしてる気分?(笑)
軽さは木ペグとそう変わりませんから、ヘッドが重くならない良さはあります。
音的にも今のところ全く問題を感じません

木ペグの音に対する良さは
両方向にゆるみが無いという点もありますから
そういう部分にこだわりをもって木ペグを選ぶ人は何かを感じるかしら。

ちなみに当時のギターはマシンヘッドがついている方が上級だったようです。
ただ、(仕方ないのですが)現代のマシンを19世紀ギターに入れると
なんかちょっと合わないというか、残念な感じが漂うのですよね。
そういう意味ではこの選択の方が見た目と実用を両立させていると思いますね。

Dscf1509

綺麗な表面版の木肌。
口輪やパーフリングは白がメープル、黒は黒檀かなあ。
メープルはこんなに細くても光に対して輝きます。


Dscf1510

これは中の力木。
フリーハンドなのでちょっと適当なのですが
だいたいこんな感じで入っていました。

レプリカとオリジナル、どこが違うかとよく聞かれるのですが
まあ、一つは音色ですね、なにせ100~200年くらいは違うのですから。
でも、弾いていて一番感じるのは音程、フレッチングのような気がしています。
オリジナルギターはどうも音の分布が現代のものと違うようで
レパートリーとして当時の曲を弾く分には良いのですが
現代の曲、あ、例えばメジャーセブンとかナインスとか
ああいう響きがしっくり決まらないように感じるのです。
あるいは現代的な不協和な響きとか。

逆に言えばレプリカはそういうところがとても受け入れてもらえる。
つまり、時代やジャンルにこだわらず、何でも試して弾いてみて
結果が良ければレパートリーにするもよし
というアプローチがすごく楽しくできますね。

もっと言えば、
19世紀の当時のギターはちょっと・・・とか
まあ、あまり古楽器に興味がなかったとしても
例えば2台めとか3台めとかのギターには
モダンギター・モダンギター・モダンギターと揃えるより
こういうレプリカタイプギターを手にしてみたら、
また面白さが広がるんじゃないでしょうか。

ちなみに今度のコンサートではそんなコンセプトで
19世紀の曲も弾きますが、日本の曲やポップスなどもあって
気持ち的にも無理なく、楽しく弾いています。

小柄なボディ、ショートスケール、ローテンションというのもよいものです。
音楽が楽になりますョ!

弦に関しては安価で使い慣れたナイロン弦でもちゃんと鳴りますから
現実的な選択としてはそれでもよいと思いますが
興味のある方はぜひガット弦も試してみてください。
あと、仕事や様々な都合で爪が伸ばせないような方も試してみてはどうでしょうね。
ちなみにわたしは爪を落として指頭奏法で弾いています。
ちょっとコツはいりますが、しばらくやっていれば案外慣れるものです。

Dscf1511
ラコート 1828年(左)とともに。


楽器のお問い合わせは
ムジカ・アンティカ・湘南さんへ
楽器紹介ページ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2014年10月 | トップページ | 2014年12月 »