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2017年3月 6日 (月)

終了:100年前のドイツギター~名工ハウザー1世を聴く~

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2017年3月5日 永田珈琲店「こもれび」にて
ご来場のみなさま、ありがとうございました。

一昨年より、小平の名店「永田珈琲店」の貸しスペース「こもれび」にて
ライブを続けていますが
毎度様々なアンティークギターを持ち込んで、
その音色と音楽をおいしい珈琲とともに楽しんでいただくことをコンセプトにしています。

この日はその第4回。
タイトルを「100年前のドイツギター~名工ハウザー1世を聴く~」として
ラウテ(リュート型)とウイーンの19世紀スタイルのギターを聴いていただきました。

この2台の古楽器ギターはどちらも稀代の名工、ハウザー1世によるもの。

今回、この楽器をさらっていて感じたことの一つに
名工の作品がいかに大切で、世の中に必要かということがありました。

世の中にはいろいろなギターがあって

例えば・・・
どんな曲でも良い音で対応してくれて使いやすい、友達のようなギター
いい音の出し方や音楽の作り方を教えてくれる、師匠のようなギター

などなど、良いものはどれも個性的で魅力があります。

でも、この名工の作はしいて言えば
弾いた瞬間に(わたしを)音楽の世界にヒューっと連れて行ってしまう、
弾いた感じすら薄れて、ただひたすらに音と対話しているよう、
そして気が付くと結構時間が経っていて、あれあれっと浦島太郎のような、
あるいは「マッチ売りの少女」のごとく、音を出している時だけ夢のような世界が見える
・・・とか

そんな感じなのです。

実際に練習していて時を忘れて約束に遅刻したこともありました(^_^;)

まあ、そんな体験もお話ししつつプログラムを進めました。

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前半はラウテによる演奏

パルティータ・イ短調(ヨハン・アントン・ロジー c.1650-1721ボヘミア)
 アリア~カプリチオ~サラバンド~ガヴォット~ジーグ

リュートの名手として知られたロジーのコンパクトな組曲。
クラシックギターのレパートリーとしてよく知られています。
ラウテの古色蒼然とした音色を聴いていただくのによい曲と思い選びました。

無伴奏チェロ組曲第1番・ト長調(ヨハン・セバスチャン・バッハ 1685-1750ドイツ)
 プレリュード~アルマンド~クーラント~サラバンド~メヌエットⅠ・Ⅱ~ジーグ

チェロの楽譜を見ながらほぼそのままに演奏してみました。
普段から和音にまみれているギタリストにとっては
単旋律での演奏は服を着ないでいるような心もとなさもありますが(笑)
あえてチャレンジしてみようと思ったのはやはりこの楽器の持つ音でした。
発音した後、ブワンと膨らむような響きと密度のある音色、
これでこの曲を弾くイメージが一気に広がりました。
対位法を単旋律で描く無伴奏組曲の世界は深く、美しく、愉しいものです。

オスカー・キレゾッティ(1848-1916イタリア)のリュート写本より
 イタリアーナ スパニョレッタ (作者不詳)

キレゾッティがルネサンスのリュート用タブラチュア譜を五線(ギター譜)に直した写本は
かのレスピーギが「リュートのための舞曲とアリア」を作るときの
元ネタとして参考にされたとも言われていますが、
そのレスピーギが選んだうちの2曲。どちらも典雅な響きが楽しめます。
スパニョレッタはシチリアーナという名前でも知られています。


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後半はウイーン型ギターによる演奏
ウイーン型とは19世紀初頭に活躍していた
シュタウファーという名工のスタイルを踏襲したもの。
オーストリア・ドイツの伝統的ギターの末裔です。

まずは音色を楽しんでもらうために、シンプルな曲を選んでみました。
子供や家族にちなんだ小品集。
あまりコンサートでは弾かれないものですが、
滋味深い古楽器ギターの音色にもよく合い
この日のようなアットホームな空間にもよいのではと思いました。


幼き日のモーツァルト(1756-1791オーストリア)の作品より
 メヌエットとトリオK.1 メヌエットK.5 アレグロK.3

モーツァルト5~6歳の頃の作品。
父・レオポルドが採譜したということですが、
きっと幼さゆえまだちゃんと音符が書けなかったのでしょうね。
たわいもない曲ともとれますが、ちゃんと形式も整ったしっかりした作品です。
それをこの歳で作っていることと
メロディやリズムなど後のモーツァルトに通じる感性が
すでに現れているという点も特筆。

こどものためのアルバム (ロベルト・シューマン1810-1856ドイツ)
「第1部小さい子供のために」より
 メロディ~兵士の行進~哀れな孤児

シューマンが自身の子供のために作った作品。
子供が弾けるよう、音数は少ないのですが
楽想は夢とロマンに満ちて、音楽がどんなに素敵な世界なのかを
優しく教えているような感じがします。

アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳1725年より
二つのメヌエット(クリスティアン・ペツォールト1677-1733ドイツ)

バッハが愛する奥さんのために作った音楽帳にあるヌエット。
バッハのメヌエットとして知られていますが、
のちの研究によってペツォールトの作品と判明しました。

そしてやっぱり、ドイツギターではバッハを弾きたくなります。
というわけで、こちらはヴァイオリンの無伴奏作品。
無伴奏ヴァイオリンパルティータ第1番より(バッハ 1685-1750ドイツ)
 サラバンドとドゥーブル

ここまで、軽いもの、ゆったりした曲が多かったので
ひとつ、派手な曲をがんばりました(^o^)丿
大序曲 作品61(マウロ・ジュリアーニ1781-1829イタリア)
大きな拍手を頂き、感激!!

最後は美しいメロディでクールダウン。
音楽のパノラマ:136 の楽しいギター小品集「カッコウ」より
(ヨハン・カスパール・メルツ1806-1856)
庭の千草(アイルランド民謡)


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アンコールはソルの月光とギャロップ。
実は、ギャロップの題名が度忘れしちゃいまして(^_^;)
お客さんに教えてもらうシーンなどもあり。。。助かりました~(笑)

終演後は数人のお客様と音楽談義、楽器談義など。
初対面の方も多くいらしたのですが、音楽を通じるとすぐにうちとけます(^^)
楽しいひと時でした。

また、このプログラムでどこかで演奏したいと思います!
ココでやって!というお声もお待ちしてます(^o^)丿

それから、当日のお客様からご感想をメールでいただいたり
FB記事で掲載していただいたので、以下に掲載させていただきます。


「今日はガット弦の響きをじっくりと聴かせていただきました。
 とても気持ちよくて癒やされました。ありがとうございました。
 とてもいい雰囲気のコンサートでした。」


「楽器に合わせたプログラム、素敵でした。
 ドイツでもこんなセンスの良い演奏会は滅多に聞けないのでは?
 絶対、ハウザーさんも心から賛辞を贈っています。
 製作者冥利に尽きますね!

 加えて意欲的な演奏内容。
 世界初演!
 ラウテによるチェロ楽譜そのままのバッハの無伴奏チェロ組曲、
 楽器の音がが心地よく、途中夢の世界に。

 ウインナーによるジュリアーニ「大序曲」
 高速スケールの一音一音が粒立って、難曲もスッキリとして聞こえ、
 ジュリアーニも納得の音楽と演奏なのでは?

 加えて指頭奏法マイスターのノイズレス演奏。
 その場をすぐに立ち去ることができないような素敵な演奏会でした。」


「昨日のコンサートの水準の高さはどうでしょう!

 Cello Suite 1, BWV 1007, 6弦DにしてD-durで始まるのかと一瞬思ったらG-durで、
 そうだ、原調だったのだと思い聞き始めると素晴らしい構成力と流れ、音。
 5弦Gでないから6弦の押弦が必要になるわけですが
 あれは明らかに開放弦でない方がニュアンスがありました。
 一番良い、(すべてい良いのですが)と感じたのはAllemande,
 あんなにチャーミングで良い曲だったのですね。
 繰り返しをほとんどの楽章で行う精神力の強さ、チェロでも省く人がいるのに。
 Suite 1のJigは野生的で素晴らしい曲ですね、いつ聴いても。

 ハウザーウインナはラウテと同じくらい、少し上かもしれないくらい、
 素晴らしかったです。ウインナは良い楽器ですね。
 長谷川先生の古典はいつ聴いてもすばらしいです。
 リズムでしょうか、経過フレーズの硬めのニュアンスも素敵です。

 ジュリアーニの大序曲の生はおそらく初めて、
 一貫したリズムで押し切った演奏からは清冽な印象を受けました。
 少しフライングの拍手も(私も参加していました)当然です。
 ソルの小品、庭の千草も素晴らしかった。撥弦楽器は本当に良いですね。」


井爪彩子さんFB記事より
「本日は、人生初の!クラシックギターのコンサートに行ってきました!

 好きなものにはぐいぐい行くよ!ということで、
 2月末にたまたまYouTubeでお見かけした
 長谷川郁夫さんのコンサートへ行ってまいりました。
 席は砂かぶり席に陣取りました。
 長谷川さんはガット弦、指頭奏法(しとうそうほう。
 ピックや爪を使わず指先で弦を弾く弾き方のことだそうです!今日初めて知った!)に
 熱心にうちこんでおいでで、まろやかで優しい、
 素朴な音色の演奏を聴かせてくれます。
 今日は約100年前のドイツギター、ハウザー1世という
 ギター職人が作ったギター2台の演奏でした。
 こんな機会は滅多にないので、
 コンサート情報を知ったその日に申し込んでおりました。

 向かって左側のギターは「ラウテ」、リュートのドイツ語読みです。
 イチジクを縦に半分に切ったみたいな形状のボディで、ネックが短い。
 で、フレットがボディにもおもいっきり刻まれている面白いデザインですね。
 音は、どちらかというと低くてくぐもっています。
 決してくすんでいるわけじゃないんですよ。
 ただ、遠くまでよく響くような音ではない。
 繊細で華やかでもあるんですが、とっても控えめな美人というか、押しが強くない。
 弦の高さも低いしホールも装飾的だし、
 音高くかき鳴らすようなタイプではないんですね。
 典雅な音なので、古い曲がよく合います。
 リュートのために作られた曲をギター用譜面に起こしたものが
 一番このギターにしっくりきているように感じました。

 向かって右側のギターはウィーン風ギターといって、くびれがつよくてボディが薄い。
 これは現代のクラシックギター(スパニッシュギターが原型)に似ています。
 ラウテと同じ職人が作ったとは思えない!
 で、ラウテを聴いた後にこれを聞くと、な
 るほど、音がまっすぐ飛んできて、ボリュームが大きい。響きがまったく違います。
 リズミカルな曲を何曲か弾いてくださったのですが、
 小気味いい音を出すのに向いているギターなんだなぁとわかりました。

 特にGrande Overture,大序曲は、
 オーケストラの演奏が頭の中で鳴るような、豪華な響き。すばらしかったです。
 どちらのギターも、現代のクラシックギター、アコースティックギターとは
 まったく音色が違っていて、生で聴いてほんとうによかったと感じました。

 生でなければ拾えない音、響かない音。そういうものもあるんですよね。
 長谷川さんが曲と曲の間に簡単な解説を挟んでくださるので、
 小難しい顔してしかつめらしく聴くようなコンサートではなくてホッとしましたわ…(汗

 休憩時間には質問も受け付けてくださって、
 ガット弦とナイロン弦の違いやそれぞれの特色を教えてくださいました。
 長谷川さんご自身が、ギターを弾くことがとにかく好きで好きで仕方がないというのが
 よく伝わってきて、温かな曲、温かな雰囲気の、いいコンサートでした。」


森秀文さんブログ “オカリナと釣りと畑と”より  「向こうの世界へいざなう音」

「先週、長谷川郁夫先生の
 「100年前のドイツギター~名工ハウザー1世を聴く~」というコンサートが行われた。
 会場に着くとまだ演奏会は始まっていなかったが、
 先生はすでにギター(ラウテ)をつま弾いておられその音を聞いてびっくりした。
 優しく、どこか遠くへいざなってくれるような、なんとも懐かしい響きなのだ。
 ガット弦(羊の腸から作られた昔ながらの弦)を使い、
 指頭奏法(爪を使わない奏法)で奏でられる名工ハウザー1世のラウテの音は、
 先生自身も「音楽の世界に連れてってくれるような音」
 「弾いていると時間を忘れてしまう楽器」と表現していた。

 この楽器で弾かれたバッハの「無伴奏チェロ組曲第1番」の全曲演奏は圧巻だった。
 ギター用に編曲されたものではなくチェロ用の楽譜をそのまま弾かれたそうである。
 音楽には、確かに目に見えない世界、
 この世界とは別な世界、形而上と表現されるような世界、
 またあの世とか彼岸と言われるような、
 物心つく前に見えていたような世界に誘ってくれる力がある。
 ハウザー1世のような昔の名工は、このような音を知っていたのではないか、と
 後日長谷川先生は言っておられた。

 改めて、目指すべき音の世界に気付かされたような体験だった。」


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