研磨弦その2 ラベラ・ポリッシュド
前回に引き続き、研磨弦の後編は低音弦です。
クラシックギターの低音弦の構造は
芯にナイロンフロスといわれる極細のナイロン繊維の束があり
その外側を金属の細い線が巻いています。
近年ではそれらに新素材が使われることもあります。
ナイロンが使われる前は絹糸が芯になっていました。
※今でも絹糸芯の低音弦はアンティークギター用に少量作られています。
巻き線は銀色メッキされた銅線が主流ですが
時々メッキをしていない銅(10円玉の色)や
銅と亜鉛の合金(真鍮、5円玉の色)のものも見かけます。
で、低音用の研磨弦というのは
もともと巻き線は丸い線なので
巻いていくと表面は凸凹になるのですが
その凸凹を磨いて平らにした弦ということです。
フラットワウンドといって、もともと四角い(丸くない)線を巻くことで
表面を平らに仕上げる場合もあるようです。
今回取り上げているラベラの弦は
どれも「ポリッシュド」とあるので磨き加工と思います。
「ポリッシュドpolished」は文字通り《研磨》。
高音弦はレクチファイドと称するのに低音弦はポリッシュド。
製法の違いかなと思います。
さて、ではまず普通の弦の様子から
写真をクリックすると大きく見ることができます。
ハナバッハのシルバースペシャル緑 815LTです。
表面が∩∩∩∩となっているのが見えるでしょうか。
ここから、ポリッシュ弦になります。
ラベラ プロフェッショナルシリーズのレコーディング413P。
真鍮巻きです。テンションはミディアムの1種類ですが
ギターショップアウラのHPによると
1~6弦までのセット弦の張力表示が37.9キロとあるのでむしろローテンション系です。
実際に張って使ってみても、強さ、硬さは感じませんでした。
表面がΠΠΠΠとなっているでしょう!
つづいて・・・
ラベラ・プロフェッショナルシリーズのコンサート&レコーディング500P。
こちらはメッキされた銅線で、変色防止加工もされているとか。
しかし、すでに見たことないような燻し銀の色(笑)
ハイテンションの扱いですが、数値でも413Pより少し強い程度で
413Pと比べて、手に感じる張力の違いはほとんどありませんでした。
ただメッキのせいか413Pより発音がはっきりしているように思います。
アウラHPによると6本セットで38.4キロのテンション。
オマケ情報ですが、このセットは高音弦も試しましたがなかなか良いです。
ピンと張ったやや硬めな感触があり、音色よく、安定がものすごく早い!
研磨弦、もう一つあります。
ラベラ・エリートクラシカルシリーズの900という型番。
これは写真の研磨された真鍮巻きの低音弦に
違った高音弦を組み合わせて3種類のバリエーションを作っています。
ゴールド(黄色っぽい)色の高音弦は「900」
1、2弦はゴールド、3弦が巻き線で用意されるのが「900W」
ブラックナイロンの高音弦のものは「900B」。
というセット売りがほとんどですが
池袋のファナでは低音弦だけのバラ弦を扱っていました。
その際の型番は
4弦908 5弦910 6弦912 となります。
殆ど413Pと変わらないんじゃないか!?と見えますが
413Pよりフラット度が高く、フラットワウンドのような感触。
そして、少し張りが強く、表面の硬さも感じます。
アウラHPによると900Bセットで39.4キロ。
それと、プロフェッショナルシリーズと比べるとグッと格安。
・・・なんでだろう?
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ポリッシュド低音弦のまとめですが、
凸凹がなくなると左手の移動でキュッキュ言わなくなります。
ウルトラスムーズ、ヴィラ=ロボスなんか弾き放題!(笑)
これが「レコーディング用」などと言われるゆえんですね。
音色の方は、マイルド(円やか)、メロウ(芳醇)
・・・まあ、平たく言えば・・・使い込んだ弦の音(笑)??
いやいや、そんなひどいものではないのですが
普通のギターの低音弦って
新品のときにジャリっていう音がしますよね、よく言えば、ブライトな感じ?
まあ、それが鳴ってるってイメージにつながるのかもしれませんが
1週間~10日もすれば、そういう音は収まって
(わたし的には)本来の音がするように思うのですが
「ジャリ」が好きな人は、頻繁に弦を替えたり
演奏直前に交換したりするのかなと思っています。
でも、あの音はやっぱり指(爪)が弦をこするノイズが
耳に早く到達するから「ガツン」と聞こえるんですよね。
この研磨弦にはまったくそういう要素がありません。
ボーーンっていう音(笑)。
でも、19世紀ギターとかを弾いていて
絹の弦や巻き線の細い弦に慣れていると
ボーーンのなかに楽器の音を聴いているので
こういう音も悪いと思わないんですよね。
むしろ(弦ではなく)楽器が鳴っているような自然な鳴り方かなと。
あ、もちろんモダンギターでは時々欲求不満的な気分も
感じないといったらウソになりますが
楽器の中ではバランスが取れた響きのようにも思います。
ギターデュオなどでは相手次第で決定的な違いが出るかもしれません・・・
19世紀ギターレプリカでは
田中清人作のラプレヴォットモデルに
前出のプロアルテ・レクチファイドの高音弦と
ラベラの413Pの低音弦を張ってみましたが
モダンギターとは違う個性的な響きを
弦の方からも作れてなかなか良かったです。
モダンギターでの試用も続けます。
この記事を読んで、ご自身でもやってみようと思われた場合は
張った直後に
「鳴らない」→「ダメだ」と即断しないことが肝心ですヨ。
いや、張ったら必ずそう思うと思うので(笑)
慣れると好きでたまらなくなる日が来るかも!
そんな予感があります。
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