若いみなさんへ~「わたしの職業について(アンケート)」
ちょっと前にWindows7から10に引っ越すときに見つけた文章で
「大学でどんな勉強をしたのか」 という記事をアップしました。
これは、2011年ごろに当時習っていた生徒のお兄さん(高校生)から
質問を受けて書いたお手紙のようなものでした。
実はそのPC引っ越しの時にもう一つ文章を見つけてまして
こちらも3000文字超!
頑張って書いた記念ついでに今日はそれをアップしようと思います(^^)
頑張って書いたシリーズはとりあえず、ここまでです(笑)
こちらは当時ギターレッスンに来ていたかわいい中学女子で、
時期からすると3学期?学校からの課題だったようです。
身近な大人に聞いてくるという感じの
職業についてのアンケートでしたが
これもお手紙のようなつもりで書きました(^^)
2016年2月15日のタイムスタンプがありました。
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わたしの職業について(アンケートと回答)
職業・・・ギター教師 ギター奏者 長谷川郁夫
- この職業についたきっかけはなんですか
中学のころから、自分の好きなことを職業にしてずっと続けたい(その世界を探求したい)という気持ちが強くありました。その頃はギターのほかに、写真(カメラいじり)や自転車いじりなどが好きなことでしたが、ギターが一番頑張れました。ギターに出会ったのは中学時代のクラブ活動からでしたが、音楽はそれ以前から好きで、エレクトーンを習うなどしていました。中学に進んだときはきっと吹奏楽部に入ると思っていたのですが、なぜかギター部に入っていました。今思えばとても不思議な縁と思います。
- 必要な資格、免許はありますか
プロギタリストとして演奏したり、有料のレッスンで生徒さんを教えたりする際でも公的なギター専門家の資格や免許等は必要ありません。しかし、それは公的な資格が存在しないという意味であって、何もしなくてよいということではありませんから、我々の仲間の多くは国内外の学校(音大や音楽院)で専門の授業を学んだり、コンクールを受けたり、リサイタルや演奏の実績を積んだりしています。
リサイタルなど演奏会のチラシやプログラム、あるいは自分をアピールするホームページなどには「プロフィール」といって、自身のこれまでの経歴を示すことが良くありますが、1)出身校 2)師事した先生 3)コンクールなど受賞歴 4)演奏会の実績 5)出版物(CDや楽譜他)などの実績 そして現在の活動の様子などがかかれることの中心です。つまり、資格や免許などはありませんが、演奏したり教えたりできる自分(専門家)であるためにいつも勉強し、磨きをかけていることが必要です。
- 資格や免許の他に必要な能力はなんですか
演奏にしても、教えることにしても人と付き合う仕事ですから、一つ挙げるとしたら人とのコミュニケーションが好きということは意外と大切な気がします。
その中でも特にわたしの仕事は基本的に一人でやっていますから、ともすれば自分の考えが絶対正しいと思いがちで、これはいつも気を付けています。自分の考えがしっかりしていることはもちろん大切なのですが、人は本当に千差万別でそれぞれがみんな違った思いを持っていますから、互いが自分の正しさを主張するばかりでは何かとうまくいきません。相手と向き合う時にはまず相手の考えを受け入れ理解することが必要と思います。
- 仕事の内容について教えてください
○ギター奏者
ギターはクラシックギターを使います。演奏曲はクラシックが多いですがポップスなどクラシック以外の曲を弾くこともあります。フルートやヴァイオリン、オカリナやリコーダー、歌などとアンサンブルをすることもよくあります。また珍しいものとして200年くらい前の当時のギターを使って当時の音楽を演奏するようなことも行っています。コンサート(ライブ)演奏のほかにCDなどの録音を頼まれることもありました。
○ギター教師
クラシックギターを教えています。生徒さんと1対1での個人レッスンのほかに10人~20人ほどのメンバーを3~4パートに分けて演奏するギター合奏(ギターサークル)の指導もしています。ギター合奏の際は指揮をすることが多いです。
○アレンジなど
自分で演奏するためや合奏などに必要な楽譜はアレンジして作ることもありますがこれも必要な仕事です。時々自身で作曲することもあります。出版社を通してそれらの作品を曲集として発売するようなこともありました。
○その他
ギター奏者として演奏するだけではなく、自分の演奏会を企画し運営することもわたしにとっては大切な仕事です。演奏会の内容を決め、会場を予約し、チラシを作って宣伝し、当日のスタッフを手配するなど細かいことまでいろいろやります。
ギター教師としてもただ教えるだけでは教室は成り立ちませんから、教室の年間計画など進め方を決めたり、宣伝をしたり、帳簿を付けたりなどします。自分の教室を持つといろいろ細かい仕事も発生します。
- この仕事について良かったことはなんですか
やはり自分を通して好きなことを仕事にしましたから、やっていて楽しい!これに尽きます。自分の好きなことにいくら没頭しても誰からも怒られず、むしろ褒められたりするのですから、こんなにいいことはありません。
仕事の規模は決して大きくはありませんが、自分が何を求めて、どういう方向に進んでいるのかということをよく理解し、納得しながら進んでいけることもこの仕事の良さです。
生徒さんがだんだん上手になって楽しそうにギターを弾いている様子を見るのはとてもうれしい気持ちになりますし、演奏会で拍手を戴いたり「いい演奏だった」と声をかけていただけたりするのも至福のひとときです。
- この仕事で大変だったことはなんですか
練習やその他音楽のことで大変と思ったことはほとんどありません。確かに予定がいっぱい詰まっていて忙しいときや、それらをこなしてくたびれてしまう日もありますが、望んでそうなっているわけですからどうということもありません。物事が思い通りに行かないときも(だいたい物事ってそうそううまくはいきませんから)あまり焦りません。
思い返せば、この仕事に進みたいと思ったときは父から強く反対され、大きな壁として立ちはだかっていましたからその時の戦いは少し大変でした。でもそれも今思えば、自分の気持ちをしっかりさせるために必要なことだったような気もしています。
あえて大変なことを考えてみると、音楽が仕事になってからは苦手なこともやらなくてはいけないというのが少し大変です。例えばわたしはお金を数えたりお金のことを考えたりするのが少し苦手です。楽しいギターや音楽の世界に没頭するときにあまりそういうことを考えたくないのです。でも、教室を運営したり演奏者として社会に参加したりするとなればそういうこともやらなくてはいけませんね。なので、そこは少しあきらめてそういう大変さは大人の役割として仕方ないことと受け入れています。
- 中学生のうちに身につけておかなければならないことはなんですか
わたしは今年50歳になりますが、中学生のときに全く気が付かず、今になってハッと思ったことが一つあります。それは歳を重ねていくと子供のころバラバラに勉強したり、覚えたりしていたことが実は関連付けられたり、一つにまとまってくるということです。
英語、数学、国語、科学、歴史 etc…いろいろな授業があって、なぜか得意や不得意があったりして、中学高校のときすでにギターの道に進みたいと思っていたわたしは「ギターと関係ない授業、こんなことを覚えたっていったい将来に何の意味があるんだろう」とよく思っていました。
しかし例えば今、200年前のギターで当時の曲を弾こうとすれば、その時のヨーロッパの様子を知らないわけにはいかないですし、当然その時の日本のことも知りたい。昔の弦がどんな素材でどういう風に作られていたか、音程はどうやって作るのか、日本語の資料がなければ無理してでも外国語を読むしかなかったり、まあとにかく学生のころに無駄だと思っていた勉強が今何かを調べたりするときの足掛かりになったりするのです。音楽に限らず、本当に好きなものについては何でも知りたくなるものですが、もっともっと知識を深めたい、いろいろ考察を進めたいと思ったときは、結局あらゆる教科総動員で当たることになるのです。
学生のときのように身近に専門分野の先生がいたら、気軽にいろいろ質問できていいなあ!と今さら思ったりします。
若い皆さんには「だから何でも勉強しなくてはいけない」などと言うつもりもありませんが、一見無駄と思えるような知識や理解でも、このように「ああ、ここにつながるのか」とか「覚えていたから案外楽しい」というようなことがたくさんありますから、興味のあることはもちろんどんどん探求して、しかし今興味のないこともまあ無駄にはなりませんから、そこは安心してテストなど必要に応じて?少し覚えたりして楽しく過ごされるのが良いと思います。
2016年2月15日 長谷川郁夫
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