ロマンス (J.K メルツ)
ロマンス アダージョ ホ短調 (ヨハン カスパール メルツ 1806-1856)
Romance Adagio e-moll (Johann Kaspar Mertz 1806-0856)
メルツはハンガリーに生まれ、ウィーンを中心に活躍した19世紀中庸のギタリストです。作品には音楽史でよく知られているところでいえばショパン、シューマン、メンデルスゾーンやリストあたりの音楽の気分があり、いかにもロマン派という味わいを感じます。
このホ短調のロマンスは開放弦で始まり、開放弦で終わるとても簡素な譜面ですが哀愁を帯びてゆったり流れるメロディと中間の盛り上がりや劇的なエンディングなど感情の起伏が豊かで、短いながらも結構ドラマチックな感じがします。ちなみにテンポ指定の「アダージョ」は心地よく、くつろぐという感じを意味していて、そこから「ゆっくり」というテンポが生まれるのですね。なので、マイナーでも重苦しくならず、穏やかに弾き始めるのが気分でしょう。このテンポ感とレガートも意識しておかないと労働歌「かぁ~ちゃんのぉ、ためぇ~なぁら~…」みたいになってムード台無しです(笑)。というのもこれ実はわたし自身の話なのですが、初めてこの曲に出会ったときは「なんだか俗っぽくて好きになれないなあ!」と思っていました。そう、弾き方が悪かったんですねえ(^_^;)メルツさん、ゴメンナサイ。 おかげさまで今ではロマン派のイメージを持って弾いております。
楽譜について
この曲は現代のギター教本や曲集などに良く取り上げられていますが、元をたどるとメルツの書いたギター教本の中の一曲でした。この教本はテクニック的な部分を簡潔にまとめたようなものでとても分かりやすい本でしたよ。巻末に15曲の小品が掲載してあってその中の第9曲がこのロマンス。いまの出版のものと少し差異がありましたが、今回の演奏はオリジナルのファクシミリを参照しています。この巻末の小品は他の曲もメルツらしいロマンディックな音楽を楽しめるもので、いくつかはやはり現代の教本等で楽譜を見たことがありました。
メルツの教本はこちら
https://imslp.org/wiki/Schule_f%C3%BCr_die_Gitarre_(Mertz%2C_Johann_Kaspar)
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