練習曲 op.35-22 アレグレット ロ短調(F.ソル) Etude op.35-22 Allegretto h-moll (F.Sor) 月光
練習曲 op.35-22 アレグレット ロ短調 (フェルナンド ソル 1778-1839)
Etude op.35-22 Allegretto h-moll (Fernando Sor 1778-1839)
使用ギター:ルネ・フランソワ・ラコート(1828年パリ)
キルシュナー社リアルガット(羊腸)弦とフィガロ社絹芯の低音弦を使用しています。
Guitar: Rene Francois Lacote (Paris, 1828)
Kürschner real gut strings and Figaro silk core bass strings are used.
演奏:長谷川郁夫 Ikuo HASEGAWA
練習曲 op.35-22 アレグレット ロ短調 3/4拍子
「月光」の別名でソルの練習曲の中では一番知られていると言っても過言ではないでしょう。ただ、現代ギター社出版の「ギター名曲ミステリー(手塚健旨著)」によれば《セゴビアの演奏によって》《日本で》《戦後に》 そう名付けられたとか・・・。まあ、メンデルスゾーンの無言歌のタイトルも当初はほとんどつけられていなかったといいますから(これは出版社が付けたのでしたっけ)、「月光」も後世の人が意図的に、あるいは人知れずついたとは思っていましたが、まさか日本で命名されていたとは!
ちなみにセゴビアの編纂した「ソル20のエチュード」内でのこの作品はモデラートとソルが指定したアレグレットより少し遅い指示に書き換えられています。確かにそのように弾くと「月光」ぽいイメージがあるような気もしますね。
ですが今回の演奏については19世紀ギターというのもありますし、ソル指定のアレグレットに寄せることを心がけました。ただし速度をメトロノームいくつにするかより、メロディとなる2分音符+4分音符のリズムとその音型がアルペジオの中から浮き出し心地よく流れることを大切にして、そのためのテンポを設定するというアプローチで作っています。
その結果、やや重くしみじみした「月光」的イメージと比べてぐっと軽やかになり、ラコートの音色と相まってスゥーっと通り過ぎる秋風のような気分が出たように思いましたがいかがでしょうか。
練習曲集op.35について
ソルの練習曲集op.35は全24曲、2分冊で出版されました。「月光」や「夢」と呼ばれ親しまれている作品もこの中に含まれています。曲集のタイトルには「とても易しいよ」と書かれていて確かに最初の方はローポジションで弾きやすい作品ですが後半になるとそれなりに手ごたえのあるものも出てきます。
作品としては初めの簡素なものから音楽的なバランスに優れ気品の高い、いかにもソルらしい味わいが楽しめます。そして24の様々なキャラクターの曲を体験することで技術だけではなくソルの標榜する「良き音楽」を感じ取ることができるような作りになっています。急がず、じっくり取り組みたいような練習曲集ですね。
楽譜は
https://imslp.org/wiki/Category:Sor,_Fernando
上記リンクより「24 Exercices très faciles, Op.35」をご覧ください。
ソルは
カルッリやジュリアーニらと並んでギター黄金期といわれる19世紀初頭のヨーロッパギター界を代表するギタリスト・作曲家で後に「ギターのベートヴェン」と呼ばれることもあります。スペインのバルセロナに生まれ同地近郊のモンセラート修道院などで音楽を学び、後に(35歳ごろ)パリに亡命。以降はパリを拠点にヨーロッパ中で活躍しました。作曲家としてはオペラやバレエその他オーケストラ曲なども書いていますが、ギターへの強い愛情からか作品番号はギター曲のみにつけられており、独奏と二重奏で63番まであります。作風としてはハイドンやモーツァルトのような上品で古典的な気分のものが多く、またカルッリやジュリアーニがしていたようなオペラ序曲や流行り歌の気楽なアレンジなどはほとんど無いというあたりがソルの育ってきた音楽環境や標榜する音楽、さらには本人の性格といったものも表われているように思います。ソルはパリにて61歳で世を去り、モンマルトル墓地に埋葬されています。
| 固定リンク | 0
« 練習曲 アレグレット ニ短調 (F.カルッリ) Etude Allegretto d-moll(F.Carulli) | トップページ | 慕情(S.フェイン)Love Is a Many-Splendored Thing(S.Fain) »
コメント