ここ数日かけて部屋の片づけをしているのですが、
そのなかで9年前に作ったイベントの資料プリントが出てきました。
ご来場の方々にお配りするためではなく
自分で話すためのものですね、台本調で書いています(^^)
ああ、これはPCのどこかにファイルがあるはず・・・と思って
探したら・・・ありました、ありました(^o^)丿
ずいぶん昔とは言え、せっかく作ったものですので
ギター好きのみなさんのお役に立ったり、
いや、立たなくても(笑)楽しみになればと思い
ここにアップすることにしました。
長文ですが、よろしければお付き合いください。
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14.06.21 クロサワ店内イベント資料
「19世紀ギターの楽しみ」
・パノルモ 1838年
・ハウザー1世 1921年 19世紀ギタータイプ
「2つのサントス」
・1941年 ハカランダ
・1929年 メイプル
「ショートスケールの名器」
・Mラミレス 1908年
・Dエステソ 1929年
「新品ギターの音色」
・ハウザー3世 2012年
「知る人ぞ知る…」
・Gヤコピ 1946年
今回はビンテージギターをご紹介するということで承っています。
どうぞよろしくお願いいたします。
ビンテージとは古く価値のあるワインのこと。それが転じて価値のある古いものについてもビンテージと呼ばれるようになりました。ギターで言うビンテージの基準はあまりはっきりしていないのですが、私のイメージとしては20世紀が始まってから第2次大戦くらいまでの楽器が「ビンテージ」。それより古いものは「古楽器(19世紀ギター)」、第2次大戦以降の古いもの・・・まあ、60年代くらいまでは「オールド」、アメリカやオーストラリアの新型楽器が出てくるそれ以降は近代・現代くらいかなあと感じています。生活や気分が変われば楽器に対して求めるものも変化していきます。そういった意味で大きく味わいが変わる時代的なタイミングとして、こんな分類を考えてみました。
◆「19世紀ギターの楽しみ」
さて、では古楽器から参りましょう!
19世紀はギターの黄金期といわれ、特に19C前半にはカルッリ、ソル、ジュリアーニなど今でもよく知られるギタリストがヨーロッパにおいて時代を飾っていました。このころのギターはいろいろな地方によって特徴のあるスタイルや音色を持っていて、大きく分けてフランス型(ラコートやプティジャン)、スペイン型(パヘスやマルティネス)、イタリア・ドイツ型(ファブリカトーレやシュタウファー)などがあり、そういうことも19世紀ギターに触れる楽しみでもあります。パノルモはイギリスで作られていますが筋からいえばスペイン型になります。
19世紀ギターは今から200年近くも前、日本で言えば江戸時代の楽器です。そのころの人々が大絶賛しあこがれた楽器であっても、当時の価値観は今とはずいぶん違うものかもしれませんから、アプローチも現代の我々を基準にすると見えるものも見えなくなる危険があります。古い楽器は少し謙虚な気持ちで、わからない理解できないことがあってもすぐに答えを出そうと思わず、しばらくは我慢というか、様子見というか、楽器に任せて楽器から教えてもらうような気持ちで付き合うとよいですよ。その間に弦やそのテンションのこと、当時の作曲家のことやほかの楽器についてなど調べていくととても楽しい発見があったりします。
パノルモ1838年・200万円・
さて、それではさっそくパノルモを見てみましょう。1838年といえば日本でいえば天保9年徳川 家慶(とくがわ いえよし)の時代で葛飾北斎や歌川広重、間宮林蔵らが活躍し、幕末の志士たちもそろそろ生まれていた・・・くらいの時代です。
ギター史でいえばソルの没年。翌年にはジュリアーニが、さらに翌年にはカルッリが亡くなるという頃で黄金期が一度終わりコストやメルツ(早死)、レニャーニ(長生)などが台頭してくるあたりで音楽史的にはショパンやメンデルスゾーン、シューマン、リストなどの時代になります。
楽器はというと典型的なパノルモの上級機種。松の表板、ハカランダの裏板、パールのつまみのベイカーの糸巻、パールの装飾、典型のラベル、7本の扇状力木と大変立派なスペックです。パノルモギターは1830年のソルの教本でラコートギター、マルティネスギターとともに推奨ギターとして紹介されました。当時としてはとても先進的なギターで、初めて19世紀ギターに触れる方にもその良さは分かりやすいと思います。私も初めての19世紀ギターは1840年のパノルモでした。
曲:6つのアイルランド民謡より ロビンアデア(ジュリアーニ)
ハウザー1世 1921年 19世紀ギタータイプ・37歳・250万円
さて、続いてもう一つ19世紀ギターを弾きましょう。・・・とは言っても実はこれは20世紀に作られた19世紀ギターなのです。
ラベルの1921年というと日本は大正10年で割と景気も良かった頃ですが、ヨーロッパは第1次大戦の影響がまだ残っていたでしょうか。ギター史ではリョベート、バリオス、プレイヤーではありませんがヴィラ=ロボスなど、音楽史ではラヴェルやファリャ、サティやラフマニノフ、レスピーギといった時代でした。
ドイツ圏では保守的というか20世紀中ごろくらいまでこういった19世紀型のギターがよく作られていました。現在、クラシックギターと呼ばれているものはスペイン型のギターの末裔になるのですが、実際にスペイン以外でスペイン型が作られる(各地でスペイン型ギターが求められる)ようになったのはリョベートやセゴビアの演奏旅行などの影響が大きいのでトーレス(1817-1892)があって、タレガ(1852-1819)がいて南米などにスペインギターを輸出していても1920年代あたりはまだ完全にスペインギターの時代とは言えない状態でした。
したがって、このようなギターは19世紀のレプリカではなく脈々と続いた19世紀ギターの歴史の最後にあたるもので20世紀製であっても19世紀のオリジナルギターと思ってよいように思います。
ハウザー1世は言わずと知れた当時の超名工で、もともとはこういった19世紀タイプのギターを作る人でした。今ではドイツというとメルセデスやポルシェ、あるいはライカなどピシッとした精度で優れたモノづくりの国といったイメージがありますが当時のドイツの楽器を見てみると意外と雑というか大味なものも多く見かけます。ですが、ことハウザー1世(とワイスガーバー)はとにかく頭抜けた精度、超一流のクラフトマンシップを持っていました。
ハウザー1世はセゴビアとの交流で有名な37年セゴビアモデルを完成させる話があります。その中で24年、初めての出会いの際「ハウザー氏は小さなおもちゃのギターを見せた・・・大変精巧にできていたので彼に自分の楽器のコピーを作らせることにした」というエピソードを自伝の中で語るのですが、当然一流のギタリストにおもちゃのギターを見せるとは考えにくく、きっとこのような19世紀ギタータイプのものを見せたのだと思います。いわゆる19世紀ギターをあまり好まなかったセゴビアらしい言い回しと思いますが、その一方でハウザー1世の腕前は一目で見抜いたのだと思います。
楽器のほうは松の表板とメープルの横裏板。内部構造もかなり違うので現代のギターに比べて低音など特に粘らず(それはそういう音がよいとされていた)タレガ以降のいわゆるスペイン型(モダン)ギターをイメージした曲にはちょっと物足りなさを感じるかもしれませんが、ソルやジュリアーニ、コストやメルツなどには気品あふれる音色で応えてくれると思います。また、これから弾くようなバッハのアレンジなどにもピッタリでしょう。
曲:バッハのメヌエット(ペツォールト)
◆二つのサントス
続いてはいよいよビンテージギターの世界に入っていきましょう。
最初にお話ししたようにビンテージギターを20世紀に入ってから第2次大戦前までとするならば腕前、知名度ともに東の横綱がハウザー1世で西の横綱がこのサントスという感じでしょうか。
ざっとサントスのことをさらっておくと
1874年スペインのマドリッド生まれ(1943年没)。幼少の頃からバレンティン・ビウデスやイーホ・デ・ゴンザレスに師事し製作を学び、その後マヌエル・ラミレスの工房に入りました。
そして1912年にマヌエル・ラミレス工房で製作した彼の楽器でアンドレス・セゴビアがマドッリッドでデビューし、その後も長年愛奏した事は良く知られています。
1921年には、マヌエル・ラミレスが亡くなったのを機に独立して、マドリッドのアドアナ通りに工房を開設。
当時レヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサやセレドニオ・ロメロ、ラモン・モントーヤ、ニーニョ・リカルド等多くのギタリストが訪れ、演奏やギター談義に花を咲かせ、ギター文化の中心的役割を果たしたその工房は、現在ロマニリョスの尽力によりシグエンサの博物館に移転されていて、当時の雰囲気を偲ぶことが出来ます。
1943年に彼が亡くなった後は、弟子のマルセロ・バルベロがその後を継ぎ、更にアルカンヘル・フェルナンデスへと、マニア垂涎の楽器製作の技法は伝承され続けています。
さて、そんなサントスが2種類ありましたので今日はそのあたりの音色を比べていただけたらと思い、取り上げてみました。
サントス・エルナンデス
1941年 ハカランダ(73年前・昭和16年・67歳)大東亜戦争勃発400万円
1929年 メイプル(85年前・昭和4年・55歳)ウォール街の大暴落 380万円
2つのサントス、どこが違うかというと年代も少し違うのですが横裏板に使われている材料が違いますね。黒いほうはハカランダ、白いほうは先ほどのハウザー1世と同じメイプルです。ハカランダはリオ・ハカランダとかブラジリアンローズウッドなどと呼ばれる硬く重たい木です。俗にいうローズウッド(インドローズ)は基本的には同じものらしいのですが産地によって木目や呼び名も変わってくるようです。ブラジル産のローズウッド=は今や希少材として取引も制限されていますね。
そして、この材料を使うと・・・なかなか言葉で表すのは難しいのですが重みがあり、腰があり、光沢感のあるような音と言えるでしょうか。ちょっと聴いてみてください。
曲:アデリータ(タレガ)
さあ、一方でこちらのメイプルですが、調べてみるとあのメイプルシロップのメイプルと同じ木のようでした。重く、かたい木ではありますがローズウッドほどは重くありません。古いリュートやギター族、ヴァイオリン族などにも使われている伝統的な楽器用材で、時に美しい玉杢、虎杢が出現しそういったものはより珍重されています。
こちらの材で作られたギターは低音など少し軽やかになり明るい響き、全体に品があって典雅なイメージがします。ローズ系の楽器より素朴な感じもあるかもしれません。この楽器で何を弾こうかなと思いましたが、バロックの曲などはやはり気分かなと思いますが、リュートの曲をそのまま弾くようなものよりもう少しこのスペインギター寄りにアレンジされたこんな曲はいかがでしょうか。
曲:ラモーのメヌエット
古い楽器というのは、どうしてもこれまでの人生(ギター生)の中で災難にあっていることも少なくなく、リペアや修復(レストア)はある程度仕方がないものです。タイムマシンに乗ってきたようなオリジナル&パーフェクトコンディションというのはなかなか見かけませんし、そればかりを求めているとよい出会いを失います。あまりヘビーなレストアは感心しませんが、適切な修理であれば問題ありませんし、少なくとも自分が持っているときに大きな問題にならないと思えば、あまり神経質にならなくてもよいと思います。
実はこの楽器については、中をのぞくともう一つラベルが貼ってあるのですね。これがなんと名工の呼び名高いマルセリーノ・ロペス。こういうことは時々あるのですがロペスが自信と責任をもってレストアしましたという意味で実際いろいろ眺めてみると手間のかかる修復を丹念にやったことがうかがえます。おかげで現在の健康状態は上々で安心して今後も弾いていけますし、こういうダブルネームも持っていて楽しいものだと思います。たくさん修理された楽器は「修理しても修理しても使いたかった」くらい良い楽器だったと思う・・・と私の友人の誰かも言っていました。
◆ショートスケールの名器
今は弦長650ミリが標準とされていて、それより短いものがショートスケールと言われています。ショートスケールは手が小さい人、体が小さい人、あるいは女性などに向いている・・・と、確かにそういう側面もありますが、ショートスケールにはショートスケールの音色や世界観がありますから必ずしも手や体の大きさだけの話ではありません。例を挙げると、19世紀ギターのころは630ミリくらいが当たり前の弦長でしたし、ジャーマンの楽器は610ミリとか590ミリなど、よりショートな楽器が一般的でした。これは手が小さいからではないと思うのです。ウクレレだって手の小さい人のためではないですよね。使われ方や音色や音楽を求めた結果の適正な弦長ともいえるわけです。
ハウザーも1世の時代から650ミリのセゴビアモデルに対して630ミリ程度の「ソロモデル」というものも作っています。今回取り上げた2台はM.ラミレスが620ミリ、D.エステソが635ミリですがそういう意味で歴史的に見れば伝統的なサイズの一つでもあります。
19世紀のころ600~630程度だったギターの弦長を650~660ミリに伸ばした時ユーザーや製作家が求めていたのはバーンと押し出しの強い音、つまりコンサートモデルという世界観でした。同じ弦で同じ音程に合わせるわけですから弦長が長いほうが張力は上がります。弦長に伴ってボディも大型化しますからさらに効果は強まります。やや緊張感があり、でも強く輝かしい音がコンサートモデルの求めるところですが、逆にショートスケール・・・あえてソロモデルと言ってみますが、こちらのほうはある意味昔ながらの暖かく柔らかくリラックスした響き、近くの人に語り掛けるような世界観が特徴と言えるでしょう。
つまり、ショートスケールを求めるときは、弾きやすさと音量だけではなくこういった要素を感じられる楽器が良いですね。手が小さくなくてもそういう楽器が欲しければショートスケールを選ぶのは全くおかしくありません。
650ミリ前後が標準となったあとはどうしても手や体が小さい人のための楽器というイメージが付きまとうためかなかなか名器と言えるショートスケールは多くはありません。そんな中で今日取り上げた歴史的な名工による作品はとても貴重なものでしょう。
マヌエル・ラミレス 1908年(明治41年) 266万円 弦長620ミリ T型フォードが発売された年
マヌエルラミレス(1864-1916)はホセ・ラミレス1世の弟であり、ギター製作の弟子でもありました。兄はどちらかというとポピュラー志向のギターを作ったのに対して、マヌエルはトーレス(1817-1892)を研究しクラシカルな楽器を目指しています。工房にはサントス、エステソ、ガルシア等の有能な弟子がいて「マドリッド派」の根幹を築くことになりました。M.ラミレスのもっとも注目すべき点は、そのギター製作における彼の役割にありました。 彼は、自分自身ギター製作はしないで(もちろんした時もあったでしょうが)、楽器を設計し、弟子を教育して意のままに作らせ、完成した楽器に署名してその品質に全責任を負い、結果として極めて優れた楽器を世に送り出しました。 このような役割はマエストロと呼ばれますが、このレベルで成功したのは、20世紀のスペインではM.ラミレスとその兄の孫であるホセ・ラミレス3世だけだったと言えましょう。
曲:聖母の御子(リョベート編)
ドミンゴ・エステソ 1929年(昭和4年)・47歳・323万円・弦長635ミリ
ドミンゴ・エステソは1882年スペインのクエンカ県サン・クレメンテ生まれ。サントス・エルナンデスと同様マヌエル・ラミレスの工房に入り修行し、その後1917年には独立してマドリッドのグラビーナ通りに工房を開き、同門のサントス・エルナンデスと並ぶ天才と謳われ、数多くの名器を生みだしたことで知られています。
曲:キューバの子守歌(ブローウェル)
◆新品ギターの音色
ここまで紹介したギターは製作から80~90年~それ以上経た古い楽器ばかりでしたが、ここでひとつ新品の楽器の音色を聴いていただこうと思います。ギターは一台一台かなり違うものですから、この一台をもって「新品の音色」というには少し乱暴かもしれませんが。。。
ギターの経年変化については、ニスのこと、接着のこと、木材の中の樹脂の結晶化のことなど、いろいろ話は聞きますが、わたしには科学的にどういうことが起こっているかはあまりよくわかりません。ただ、弾いているときに感じる感覚的なことを言えば弾いて時間が経つ・・・いわゆる「弾き込み」をすることによって
・張力が弱くなったようになる(鳴らしやすくなる・弾きやすくなる)
・音量のコントロールがしやすくなる(バランスがよくなる、伸びが出るなど)。
・音色は角が取れて円やかになり色彩的な幅が広がる。
というようなことが感じられます。弾きやすく感じるのは自分自身が慣れてくるということも十分あるでしょうが、それを差し引いてもごれはプロのギター仲間でもそういう話になりますし、こういうお店の中で新品と中古を試奏しても新品は特有の状態を感じますから、実際にそういう変化があると私は思っています。
新品や時間が経っていてもあまり弾かれてこなかったようなギターは、弾き心地に少し硬い感じがあって、わたしはそういう状態のことを「生硬い」と呼んだりしています。弾き込むことで全体にバランスがよくなったり音の伸びが出たり、鳴らしやすい(コントロール性)というようなことは感じても生まれ変わったように音量が増すというのはあまり感じたことはありません。鳴るギターはやはり、最初から鳴るようにも思います。
ヘルマン・ハウザー三世2012年(新作)・54歳・リョベートモデル
ヘルマン・ハウザーI世(1884-1952)の技術はII世(1911-1988)、更に1958年生まれ(現在56歳)のIII世に受け継がれ現在も愛好家垂涎の的と言うべき楽器の製作が続けられています。三世は、ドイツのギター製作展示会で初のゴールド・メダルを受賞。その技術と楽器としての完成度の高さは誰もが認めるところです。
このリョベートモデルは1世がセゴビアに先んじて1920年ごろリョベートに会った際にリョベートの持っていたトーレスをベースに作ったモデルでセゴビアモデルと並んでハウザー家の伝統的なスタイルです(2世も作っています)。セゴビアモデルに比べるとボディも弦長も少し小型です。このギターは優しく澄んだ透明な音がします。
曲:魔法のセレナーデ(ヨハンソン)
新品ギターの生硬さは青春時代のようなものである時期特有の状態ですから、それ自体が悪いということはありませんから、そういう状態を楽しみながら楽器と一緒に過ごすのも中々オツなものではあるでしょう。よく弾いて2年~3年くらいでかなり変化が感じられて、その後もゆっくり熟成するように変化していきます。そして、50年くらいたつと立派なオールドギターの仲間入りということになるでしょう。
◆「知る人ぞ知る…」
ギターに興味を持っていろいろ見て回っていると、時々面白いギターや珍しいギターに出会うことがあります。例えば、どこかの図鑑に載っていたそのものとか、有名な製作家が何かの理由で作った特別なギターとか。また、見たことのない名前であってもよく調べてみると興味深い筋だったりなど。
楽器は音や弾きやすさで選ぶのはもちろんですが、調べていろいろ情報が出てくる「名のある」ものだったりするとより愛着もわきますし、そういうことも楽しみの一つです。
そして、あまり知られていない楽器で「これは良い」というものを見つけるととても幸せな気持ちになったりします。あまり知られていないということは、価格的にも購入する側に有利な場合がありますしね!
今回はそんな1台を見つけましたので、最後にこれをご紹介しましょう。
Gヤコピ 1946年(昭和21年)・スペイン・68歳・100万円
G.ヤコピはガマリエル・ヤコピという名前で有名なホセ・ヤコピのお父さんです。。(イタリア・トスカーナ州セラヴェッツァ、23-XI-1878生、アルゼンチン・ブエノスアイレス・サンフェルナンド没 - 10-III-1951)スペインのバスク州ビトリアに住み1949年サンフェルナンド、アルゼンチンの町に定住した。内部の逆扇形の力木は1947年に父子で開発しのちに特許を取ったというデータがありました。
この楽器はスペイン在住時代に作られたものなのでスペイン製ですが、ヤコピの名前はアルゼンチンのイメージが強いですね。しかし、ホセの(70年代前半辺りまで)方もそうですが、実際に弾いてみると全くもってスペインのギターという音を感じます。しかも、マドリッドでサントスやエステソが活躍していたような、ある種のノスタルジックな味わいを持った古き良き時代の雰囲気があります。クロサワ楽器の回し者ではありませんが(今日は回し者か(笑))、こういう雰囲気を味わえる良いギターがこの値段ですから、ビンテージギターに興味がある方の入門にはお勧めしたいと思います。
曲:アラビア風奇想曲(タレガ)
◆まとめ
人は時代によって何がよいかという考え方(価値観)も、聴きたいもの、弾きたいものも変わってしまいますが楽器はその時代の様子や要求をそのまま色濃く残して現代のわたしたちに伝えてくれます。ですから、ビンテージ楽器と相対するときには現代の視点から良し悪しを言ったり、現代の要求をどんどん突きつけたりしてもあまりよいことはありません。作られた時代や作った人の思い、周囲の作曲家や演奏家のことなどいろいろ思いを馳せながら奏でることで、きっとわれわれの目が開かれ深い楽しみを得ることができるようになるとおもいます。少なくとも今日ご紹介したどの楽器(製作家)もその当時から高い評価があったいわゆる名人・達人の作ったものです。この後の時間は皆さん試奏されていかれるかと思いますが、どうか尊敬をもって弾いていただければと思います。
本日はどうもありがとうございました。
スタッフの皆様にも大変お世話になりました。
わたしも大変楽しく取り組ませていただきました。
またの機会にお会いできたらと思います。
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