06.楽器ばなし

クラシックギターのインプレッションです。

2017年4月18日 (火)

19世紀に「チェンバロ」 その1

20170418130046

GG連載ネル・コル記事の続きばなしです。

上の画像はジュリアーニの作品65、ギターと鍵盤バージョンの表紙ですが
タイトルには「ギターとチェンバロ」とあります。

この作品が作られた時期はギター五重奏バージョンとほぼ同じ
1815年前後のようです(出版は1823年)。

その当時にチェンバロもあったとは思いますが
楽譜はダイナミクスの指示もあって、ピアノ用に見えます。
まあ、実際に相手をしたと思われるフンメルさんは
いわゆる当時のピアノで弾いたと思います。

何だろうなあ、思って検索してみると、興味深い記述が見当たりました。

GGサロコンでリュートチェンバロ(ラウテンべルグ)の演奏が大好評で
ギター界にも名前が知られている渡邊順生氏のインタビューより

「チェンバロ」という呼称ですが、18世紀にはピアノもクラヴィコードも含めて、
 有弦鍵盤楽器はみんな「チェンバロ」なんです」
http://www.cembalo.com/instruments/writings37e.htm

こういうことが、19世紀になってもまだ(一部に)残っていたのでしょうかねえ。

ネル・コルの作曲者パイジェッロのイメージとかもあるのでしょうか。。。


そう言えば、全然関係ない話ですが

ブリームが編曲したボッケリーニの序奏とファンダンゴ、
チェンバロと書いてあるのに、明らかにピアノ的な楽譜で

チェンバロ奏者に見せると
「ああ、これはチェンバロの楽譜じゃないよ、こうは弾けない」と言われ

ピアノ奏者に見せると
「チェンバロって書いてあるじゃん」と言われた・・・

という経験を、ふと思い出しました(笑)。

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2016年12月 8日 (木)

テルツギター 弦交換 ハナバッハ/テルツギター用弦

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テルツギターはもともと19世紀ギターの一種で
通常のギターより短三度高く調弦する小型のギターです。

ヨーロッパ各国のスタイルで見られますが
特にドイツ、オーストリアなどでよく使われたようで
シュタウファー系のものをよく見ます。

古いギターでは「これがテルツギターです」
なんてラベルに書いてあったりはしないので
だいたい弦長で580mmを切ってくるとテルツギターかな?なんて思います。
ちなみにジャーマンスタイルのギターはそもそもが弦長短めで
610mmとか600mmなどは普通の弦長なのです。

さて、
この楽器は野辺正二氏2003年製作のものでシュタウファーモデル。
野辺さんは溝カルでおなじみ、かの溝渕浩五郎先生所有の
シュタウファー(アントン)を預かっており
それをもとに、シュタウファーモデルを製作していました。
野辺さんらしく、良材を使って細部までかっちり作られていて
澄んだ爽やかな音色がしています。


今日は
来年1月28日の古楽器トリオ武蔵村山公演での使用を視野に
これの弦交換をしました。

今回このギターにはナイロン弦を張ったのですが
ハナバッハからリリースされているテルツギター用のセットを選びました。

以下データです。
(低音弦はデータを取ってもあまりあてにならないので割愛しています)

======================

野辺正二作 テルツギター/シュタウファーモデル
弦長570mm 張力はA=415で算出
ハナバッハ・テルツギター用弦 太さは張る前に計測した。

1弦 ナイロン0.57 5.156k
2弦 ナイロン0.72 4.310k
3弦 ナイロン0.96 4.827k

ちなみに、以前張っていた弦はハナバッハのイエローラベル
ギターショップアウラHPにあったデータによると

1弦 0.71 7.467k
2弦 0.81 5.455k
3弦 1.01 5.343k

となる。
張ってあった弦をはずして計ると元の太さより
およそ0.1から0.2ミリ程度は細くなっている。(引っ張られて伸びたため)

イエローラベルの時はコロコロと丸く、太く、力強い音だったが
テルツ用弦に変えるとテンションを下げた時特有の“楽な鳴り方”になったと感じる。

力強さは落ちるのだが、余韻が伸びるようになり
音色のバラエティが増え、華やかな色合いが出てくる。

どちらが良いかは少々迷うところだが、
もともと鳴りはある楽器なので今回はこちらで行ってみようと思う。

話は脱線するが
ナイロンで0.6mmの弦はガット弦では0.55mm程度の弦と同等のテンションになる。
19世紀ギターなどで、ナイロン弦仕様で
ハナバッハのイエローやダダリオのライトよりテンションを下げたい場合の
一つの選択肢になると思う。

ハナバッハテルツ弦は池袋のギターショップ、ファナで扱っている。
ただし、残念ながらばら売りはされておらずセット販売のみ。

これより細い弦としては同じくハナバッハからアルトギター用弦が出ている。
データを見ると高音弦はテルツギターと変わらない程度にみえるが
うろ覚えの記憶では低音弦はかなり細かったように思う。

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2016年12月 3日 (土)

ルネサンスギター 弦交換

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今年6月に入手した田中清人作ルネサンスギター。
出来上がったときには丹波篠山の田中工房まで行ったのを思い出すなあ!

6月23日の記事

来年の演奏会に使おうかというアイデアがあり
今回、総ガット弦に交換することにしました。

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ルネサンスギターは16世紀に活躍した4コースのギター。
元の楽器(オリジナル)は現存していないので
当時の絵などを参考に作られています。
いわゆるバロックギターが登場した後も
18世紀くらいまで小型のギターとして使われていたようです。

調弦は下からソ・レ・ラ・ミ。そう、ウクレレと同じ。

ただし、ウクレレはバロックギターから
南米を経てハワイにやってきたと聞いたので
繋がってはいるものの
ルネサンスギターが直接ウクレレになったわけではないようです。

これは16世紀の楽譜。
4コース用のタブラチュア譜。

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こういったソロや、かき鳴らしによる伴奏などで使われていたといいます。

さて、今回の弦交換。
今年春に借りた楽器のデータをもとに
1コース5キロ程度を目安に弦を選んでいましたが
楽器による違いがあるのか
ずいぶんテンション低めの調整でしっくりきました。

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======================

以下、データ。


田中清人作 ルネサンスギター
弦長410mm 張力はA=415で算出。
https://www.cs.helsinki.fi/u/wikla/mus/Calcs/mc.htmlを参照。

1コース ガット0.53 (トロ・ニス仕上げOX) 3.391k
2コース ガット0.55 (キルシュナー・フレットガット) 2.049k×2
3コース ガット0.68 (アクイラ・オイル仕上げ) 1.973k
3コース ガット0.65 (サバレス・ニス仕上げ) 1.803k
4コース ガット0.99 (アクイラ・オイル仕上げ) 2.347
4コース ガット0.53 (トロ・ニス仕上げ) 2.691k

今回はお試しということもあって
中古弦、フレットガットなど組み合わせたので
かなりチャンポンになっているが太さのみで選んだ故。

ガットにすることと、テンションを下げたことで
明るく軽やかに鳴る感じが出た。
かき鳴らしも爽やかだ。

ガット、特に細いガット弦は
ダルダルで鳴らないところからグイッと引っ張り上げて
鳴りが出てきた(出はじめた)なあというあたりのテンションが
一番使いやすいような気がする。

こういう時の操作は木ペグが一番いい。
マシンでは音を上げるまでにグルグルしすぎるのと
テンションを巻き上げる左手に感じないので
感覚的につかみにくい。

ケースはウクレレ用でピッタリ!
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田中清人さんのHP


田中清人さんのブログ

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2016年9月29日 (木)

センチョルディ工房跡地

トロのガット弦でいつもお世話になっている
ムシカアンティカ湘南の渡邉さんからメッセージが入りました。

「今、バレンシアに来ています。
 10時間かけて昨晩グラナダからバスで着きました。
 取り敢えず長谷川さんのギターの生まれた家の写真を送ります。
 現在改装中です。」

そう言えば、6月頃でしたか
わたしの持っているバレンシアのギターの
ラベルを見てもらったことがあって

「場所がわかれば今度行ったときに
 写真でも撮ってきますから
 期待しないで楽しみにしててください」

なんて言われていたのでした。

バレンシアのギターというのは
この前GGサロンでもお披露目し
今度の土曜日のライブにも使うこれ。

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センチョルディ・エルマノスのギターで
およそ140年くらい前の楽器です。

ラベルがこちら。


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Bolseria,5
というのが住所です。


そしてこれが今の同住所の様子(ジャジャン!)
3

この写真中央の奥、
緑のネットをかぶった建物があるところが当地です。
現在改装中ということのようです。

近づいて撮ったのがこちら。

1

さりげなく美女を配置するあたり心にくい!
さすが渡邉さん。

お隣のピザ屋さんの看板に
Bolseria という町名があります。


2


ヨーロッパでも有数のバレンシア中央市場のすぐそば。
大昔からのバレンシアの中心地で、大聖堂までも5分程度の場所ということ。

はぁ~~、ずっと昔ここに工房があって
ギターを作っていたんですねえ。
そして縁あって私の手元にそのギターがある。
何とも時空のロマンを感じますねえ!

渡邉さん、ありがとうございました。(^o^)丿

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2016年7月31日 (日)

トーマス・ジョンソン作 6コースギター 2011年 弦交換

今日はこの楽器の弦交換。
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Thomas A Johnson (トーマス・A・ジョンソン)作
6コースギター (ジョセフ・パヘスのレプリカ) 2011年製
オリジナルをつぶさに研究した、限りなく本物に近いレプリカです。

2本の弦を一対として1本分の役割を持たせるギターは
複弦と言いますが、複弦の場合はその一対を「コース」と呼びます。

つまり、このギターは6コース12弦。
ただし、いま第1コースはシングルとしているので
合計では11本の弦を張っています。

いま「バロックギター」と言われるギターは
5コースの複弦の楽器で18世紀まで使われていましたが
いわゆる19世紀以降のギターの主流、6単弦ギターに進む過程で
このような6複弦ギターも使われていました。

スペインやフランスで多かったようで
オリジナル楽器もこの元になった楽器パヘス(スペイン)や
プティジャン(フランス)のものなど見たことがあります。

さて、今日はこの楽器の弦を交換して
ガット弦仕様にしてみます。

張ってあった弦はナイルガット。
この楽器に張る弦はキルシュナー社のものから選んでみました。

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弦の太さのデータを取るためにデジタルノギス。
本来ならこういうのを計るのはマイクロメーターなのですが
弦はコロコロしててホントに測りにくいので
最近はこれで何か所も計っちゃいます。
小数点以下2桁まで表示なのですごく便利です。(^o^)

あと、ペグコンポジションも用意しました。

今回の弦交換はナイルガットをリアルガットにすることと
4~6コースをオクターブにすることにしました。
4~6コースの巻線はまだ使えそうなのでそのままにします。

以下データ(おぼえがき)========

弦長646ミリ ピッチ415Hz~430Hzを想定

張ってあった弦(ナイルガット)
1 : 051(シングル)
2 : 063
3 : 080

新たに張った弦(実測値)
1 : DL 046 (048)
2 : DL 056 (060)
3 : FDL068 (069)
4 : DL 048x (050)
5 : DL 058 (062)
6 : DL 079x (079)

Xはバーゲン価格の2級品の弦だが
悪い感じもそれほどない。

音色は上々。思った通りの感じ。
音に色あいを感じる。ここがガット弦の良さと思う。

全体に以前の弦より細くなったので
440Hzの調弦も可能になった。

低音弦がオクターブになると響きが華やかになる。
特にラスゲアードなどに顕著。
ただし、スケールのときや
2声の動きで下の声部が上の声部を飛び越えたりすると
一瞬ぎょっとして手が止まる(笑)

やっぱり、ここでも「慣れ」かと。

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(低音弦はオクターブに張った)

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(ヘッド部、糸蔵の様子)

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(ブリッジ部、サドル無くバロックギターやリュートのような弦の取り付け)

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(ラベル)

================================

この楽器は昨年、アンティークフルートとのアンサンブル「シードルズ」で
一曲だけ演奏した際、「すごく良かった!」とうれしい感想をいただきました。
1曲だけだったのは、実はわたしが複弦の操作に全然慣れていなかったから。

2本で1対の弦はなんというかきし麺のような?
昔のパンツの平ゴムのような?(笑)
こう、平べったいものの上っ面をひっかくような感触で
ずいぶん戸惑ったものですが最近は少し慣れてきました。

今後はいろいろなレパートリーを試してみます。
明後日、フルートの朝倉氏が来るので
ライブに取り込めるよう相談してみたいとも思います。

こうご期待!(^o^)丿

【後日談】
上記の弦交換のすぐ後に
フィランディエレの6コースギター教本を見たところ
弦は6コースのみオクターブを張るという記述を見つけ
そのように変更しました。オクターブ上弦はガットで。
オクターブが鳴るキラキラ感は下がりましたが
落ち着いて弾くことができます。ヨカッタ(#^.^#)

ま、最初に見てからやりなさいということでもあるのですが(^^ゞ

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2016年6月23日 (木)

弦楽器製作家 田中清人さん

Kyond

先日、注文していたギターを受け取りに
丹波篠山の田中さんの工房を訪ねてきました。

弦楽器製作家の田中清人さんは
お会いするのは初めてでしたが、
その存在と楽器は20年近く前から
存じ上げており、ずっとお会いしたいと思っていました。

まだ、弦楽器フェアが
将棋会館でやっていたころ、
田中さんの斬新なギターが
とても印象的だったことを
今でもよく覚えています。

近年ではFBでつながっていただき、
製作の様子や刃物や砥石やいろいろな記事を
楽しく拝見しています。

工房ではいくつかのギターを
弾かせていただきましたが
素晴らしいクラフトマンシップを感じる
素敵な作品ばかりでした。
楽器談義も楽しかったです。

写真、
わたしが持っているのが
今回注文し完成したルネサンスギター。
田中さんが持っているギターは
ラプレヴォットというタイプの
19世紀ギター型ですが
クニャクニャのフレットに注目!
田中さんが考案された
音律チューニングフレットです。

狙って作っているから当たり前なのですが
こんなにフレットが曲がっているのに
出てくる和音が綺麗で不思議な感じがします。

楽器についてのレポートは
また後日にしたいと思っています。
ルネサンスギター、とてもチャーミングな楽器です。

田中さんのブログでも記事にしていただきましたhappy01
http://kiyond.blogspot.jp/2016/06/blog-post_24.html#links

田中さんのホームページでは大変興味深く、
楽器の理解に参考になる記事がたくさんあります。
http://www.kiyond.com/

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2016年5月 9日 (月)

ルネサンスギター 弦交換

5月22日の逗子ライブのためにルネサンスギターの弦交換。
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ルネサンスギター うさぎ楽器(菅原大輔)1994年 弦長505ミリ 

張力はA=415Hzで算出(キルシュナーの計算尺による)

1コース カーボン0.45 (ピラミッド・リュート用弦) (5.1k)×1
2コース ガット0.53 (サバレス・オイル仕上げ) (2.7k)×2
3コース ガット0.63 (サバレス・オイル仕上げ) (2.5k)×2
4コース ガット0.89 (サバレス・オイル仕上げ) (2.7k)
      カーボン0.45 (ピラミッド・リュート用弦)(4.0k)

《おぼえがき》
オイル仕上げのガットはニス仕上げとまた風合いが異なり
スムースで指あたりが良い。

このルネサンスギターは逗子のうさぎ楽器より
ライブのために貸し出しいただいたもの。
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ロゼッタの意匠がカワイイ。

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センチョルディ・エルマノス 弦交換

来る6月10日、GGサロコンを見据えてスパニッシュギターも弦交換。
今夜はこんなのばかり。
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スパニッシュギター (センチョルディ・エルマノス 1880年頃 弦長645ミリ)
こちらも木田新一氏撮影

張力は392Hz時の値(キルシュナー計算尺による)

以前の弦→今回の弦

1弦 0.63(5.8k) → 0.64(6.0k)(キルシュナー・ハイツイスト・ニス)
2弦 0.79(5.1k) → 0.75(4.6k)(キルシュナー・ハイツイスト・ニス)
3弦 0.91(4.3k) → 0.87(3.7k)(キルシュナー・ハイツイスト・ニス)

4~6弦 アクイラシルク800セット
       → トロシルクノーマルセット

以前の弦はガットもアクイラ弦。
ラウテと同じ弦を張っていた。
ゲージが違うのは測定の誤差の範疇。


《おぼえがき》
初めて使うキルシュナー社のガット弦。
アクイラの弦などを見慣れていると「ほんとにガット?」と思うほど透明。
もちろん、折り曲げたりすると白くなる(ガットだから)

表面もツルツルで手触りが良く、直接指で触れる撥弦楽器には良いかもしれない。
(ザラッとした弦にはそれはそれで味わいはあると思う)
とてもしっかりした太い音だった。

が、

パッケージのゲージと実ゲージが違っていた。
ゲージを実測せずに1弦を張ったので
以前の弦と指に感じるテンションが変わらないのでびっくりしてしまった。
実測してみると
060→064 073→075 085→087
特に1弦を想定して手に入れた060は
+0.4も違うと大きくイメージが変わるので困ったものと思う。

ただし、慌ててガムウトの0.60を張ると
ちょっと弱々しい感じがしたので、また戻した。
けがの功名的にこれはこれで良かったのかもしれない。

キルシュナーは同時に2セット入手したがもう片方もゲージは同じようなものだった。
FD(ハイツイスト)だからそうなるのか、ちょっと周囲にリサーチしたいと思う。
ちなみに通常のプレーンガットではほぼ表示通りだったので
向こうが間違ったのかな??

結果的に前のゲージとそう変わらない高音弦だったので
低音はトロ社のシルクノーマルテンションを合わせたが
ほぼ以前と同じ程度の弾き心地。
トロの方が音色的に若干しなやかな感じはあった。

(低音)弦の太さを見比べても
アクイラの800(19世紀用とうたわれている)と
トロのノーマルはほぼ同じくらいに見えた。

このギターはサドル(にあたる部分)が低いので
スーパーチップを使用している。


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2016年5月 8日 (日)

ハウザー1世ラウテ 弦

6月10日のGGサロコンを見据えてラウテの弦交換。

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ラウテ(ハウザー1世作1914年 弦長660ミリ)
(写真は木田新一氏撮影)

張力は392Hz時の値(キルシュナー計算尺による)

以前の弦→今回の弦

1弦 0.62(5.9k) → 0.60(5.5k)(トロ・牛・ニス)
2弦 0.79(5.4k) → 0.71(4.3k)(トロ・牛・ニス)
3弦 0.89(4.3k) → 0.82(3.6k)(ガムウト・羊・ニス)

4~6弦 アクイラシルク800セット
       → トロシルクライトセット

以前の弦はガットもアクイラ弦。

《おぼえがき》
思い切ってテンションを下げてみたので
弾くときの感触はけっこう変わったがいやな感じはない。
鳴りも悪くはならず、軽やかさが出たように思う。

低音弦はデータがないため張力は不明だが
高音弦に準じた程度に緩くなったようだ。

しばらく調子を見て、ピッチを検討したい。
392Hzより少し上げてもよいかもしれない。

トロ社ではシルク芯の巻弦を作らなくなったらしい。(今後はナイロン芯)
テンションデータはなかったが、
19世紀ギターに合う細めのシルク弦は
貴重な存在だっただけに大変残念。

アクイラのガット&シルクセットの弦は
19世紀ギター用とうたっていても少々太めだ。

ガムウトの弦はギター用のセット弦で
062 082 100という組み合わせでlightとある。
牛の場合beef gutと書かれているので
書かれていないものは羊だったと思う。

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2014年12月14日 (日)

イグナシオ・フレタ・エ・イーホス 1977年 ‘HOSHIDO’

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イグナシオ・フレタ・エ・イーホス 1977年 スプルース&ローズ 650ミリ
(故)芳志戸幹雄先生がバルセロナのフレタに直接注文し
以来最後まで愛奏されていたギターです。

堂々たる風格。
まあ、フレタはある意味で一番有名なギターともいえるかもしれません。
見た目、いかにも普通。どこかで見たようなギターに見えるのは
ヘッドの形もボディのシェイプも、口輪のデザインから何からなにまで
いっぱい真似されたからでしょう。

真似というのは別に悪意があるわけではなく
むしろ敬意をもってやられた部分が多いと思うのですが
つまり、ある時期フレタギターは
憧れの、あるいは目指すべきギターだった。

今となっては、よく鳴るギターはたくさんありますが
例えば60年代などでは音が良くてバンバン鳴る!という点で
フレタ・・・あとラミレスとかかな
あの辺りは驚異的な存在だったのではないでしょうか。

だから、多くの演奏家に愛されたし
そういうこともあって、手工楽器も量産楽器も
いわゆるフレタのイメージを取り入れたものが
多く作られていたのだと思います。

フレタは杉の表面版で成功したタイプの製作家なので
60年代中ごろからは杉が多く
スプルースのフレタは少し珍しい部類です。


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裏板
よく磨いたら部屋が散らかっているのが映ってしまってcoldsweats01

横裏板はローズウッド。
いつもビシッと柾目の材を使っている印象。
そういえば、表板もベアクロウとか見た記憶がありませんね。

フレタの横裏材ははローズが多くごくたまにハカランダを見ます。
希少価値も手伝ってハカランダ=上級機種というイメージは
結構あるかと思いますが、フレタの場合はあまり関係ないようです。
実際のところは材によって音も変わりますから
製作者の求めるところによって材は選択されているということですね。
ロマニロスやフレドリッシュもローズを好む製作家として有名です。

そういえば、珍しい例として
メープルを横裏に使ったフレタは弾いたことがあります。
いつものフレタより少し軽やかで明るい印象だったように覚えています。


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ラベル
イグナシオ(初代)と二人の息子(ガブリエル&フランシスコ)で
作っているというラベルです。
ちょっと調べてみたのですが
1963年までは初代のラベルで64年以降がこのラベルのようですね。
ただ、ラベルが変わる前でも息子たちは手伝っていたということです。
この1977年という年は初代のイグナシオさんが亡くなった年で
まあ、ここまでが初代が触った楽器といえます。

初代はもともとヴァイオリン製作からギターに転向したようで
こういう細長いラベルはその名残なのでしょう。
初代ラベルはもっと細長いものでした。

60年代のものにはラベルに製作番号が記入されていたりしますが
このころになると製作番号は
内部のネック付け根あたりに刻印されています。

ちなみに、ネックの取り付け方は
ネックの付け根内部に大きなブロックを入れて
外から溝を掘りネックを差し込むという方法で
これはヴァイオリン作りから来ているとのことですが
「ドイツ式」と呼ばれています。
フォークギターなどもそういう作り方が多いようです。
マーチンとかドイツ系ですからね。

スペイン式はネック材を内部まで貫通させるやり方で
ネックの横に溝を切りそこに横板を差し込んだりします。


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ヘッド
スペイン系のギターのヘッドはいつも大きめですよね。
こういうのはきっとその土地や時代の美感みたいなものなんでしょう。
大変見慣れたデザインです。ナットはかなり太目。


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マシンヘッド
今はなくなってしまったフステロ社の糸巻。
竪琴が付かないこのデザインは「フレタ型」と言われています。
味わいがあっていいんですが、ギアの見た目も
あと、操作した感覚もちょっと高級感にかけるんですよねcoldsweats01
換えたい気持ちが湧き上がりますがオリジナルがいいか迷いどころです。

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ブリッジ
両端に縦の白が入るのがフレタのデザイン。
サドル(骨棒)のオリジナルは1弦側も6弦側も1ミリかもうちょっとくらい
はみ出るように作られていて愛嬌を感じます。
写真のものはピッタンコですから後から作ったものでしょう。
弦高はかなり低めに調整されています。


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口輪
これもよくコピーされているので見慣れたデザイン。
しかし、フレタって同じデザインでずーーっと作る製作家ですよね。
ボディサイズは1世ラベルの終わりのころで少し大きくなっているようです。

さて、音の方はというとこれが本当に素晴らしい。
決して珍しいタイプの音ではなく、正に「ギター」という音。
多くのギターが目指したフレタ的な音の頂点。
著名なギタリスト達が名演をしたあの音色。
ある種のギターの音のイメージそのものという感があります。

低音も高音も円やかで
密度を感じる濃い音がグーッと伸びて行く
抑制を効かせたヴィブラートを加えて
その響きをいつまでも聴いていたい
そしてじっくりと音楽に向き合いたい気持ちにさせる音ですね。


鳴り自体はボリューム感という意味で、
たぶん杉のフレタの方があると思うのですが
スプルースのフレタは音の純度という点で大変魅力があります。

また、フレタというと
張りが強くて弾きこなすのが大変!というイメージもあり、
確かにしばらく試奏しただけでもそう感じるフレタはいくつもありました。

ただ、この楽器についてはどうもそれをあまり感じません。
弦高も低く、軽いタッチでも敏感に反応してくれますし
それでいて重みのある音がちゃんと出てくれる。
古い楽器にも通じる名器的な鳴り方と言えます。
芳志戸先生によって約20年、よく弾きこまれていることも
影響しているのではないかと思っています。

現代ギターの別冊で面白い資料があったので
鏡片手に見比べてみました。
クリックすると大きく見れます。
Dscf1532
写真は左が1世ラベルのもの(62年)、右がイーホスラベルで64年。
9本の扇状力木を受ける下の部分が両者で違うのですが
77年のこれは左と同じ力木配置でした。
これを1世型、旧型と言っていいのかどうかは
もう少しいろいろ見てみないとわかりませんが、
そういう風に注文したのかもしれませんね。

それ以外の点として
表板サウンドホールから上は板をもう1枚貼り付け
厚く、重くして、つまりあまり振動しないようにして
一方でサウンドホールから下をよく振らせる
というような発想がこの写真から見て取れます。
(実際に鏡で見てもそうなっていました)


Dscf1517
弦はとりあえず、ハナバッハの緑から試してみましたが
割と良いと思います。


芳志戸先生の演奏はYouTubeなどで
今でも聴くことができます。
YouTubeにリンク

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